訪韓報告① 進歩政党編

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7月11日から14日まで、大椿ゆうこは、福島みずほ党首・服部良一幹事長らと共に韓国を訪れ、進歩政党4党(共に民主党、進歩党、祖国革新党、正義党)や、市民団体・労働組合との交流を行いました。今年4月の総選で野党・進歩勢力が大躍進し、拒否権乱発・メディア掌握・本人や夫人の様々な疑惑といった問題を抱える尹錫悦大統領には弾劾を求める声が高まっています。短い間でしたが、「政治を変えよう」という熱気にあふれる韓国に身を浸し、様々な刺激と学びを得ることが出来ました。

訪韓から時間が空いてしまいましたが、その時の様子を何回かに分けてご報告します。まず今回は進歩政党4党との交流についてです。

進歩党~解散から復活までの壮絶な努力~

最初に交流したのは進歩党です。金在姸(キム・ジェヨン)常任代表、尹鍾五(ユン・ジョンオ)院内代表、全鐘德(チョン・ジョンドク)院内副代表、洪憙眞(ホン・フィジン)青年進歩党代表が出迎えて下さいました。

進歩党の前身である統一進歩党は、2014年12月に憲法裁判所から解散を宣告されました。強制解散から10年近くの年月を経た4月の総選で3議席を獲得するという大復活を果たした進歩党に、復活までの努力や党が重要視する政策について聞きました。

進歩党は農業・労働・女性・青年の4分野に特に注力し、それぞれの分野に特化した共同代表を置いています。韓国は穀物自給率が20%台となるなど、日本と同様の食糧問題を抱えています。野党は糧穀管理法改正案を提出し、米価暴落時に国が余ったコメを買い入れることを定め、食料の安定供給と農業生産力の強化を図ろうとしましたが、大統領が拒否権を行使しました。輸入依存・市場経済任せの農業政策に固執する現政権に対し、進歩党は農業を市場経済任せにせず国の責任を明確にする「農民農業農村基本法」を提案する等の取り組みをしています。農業者戸別所得補償制度の復活を掲げる日本の社民党とも、目指す方向が同じことが確認されました。

また、強制解散から復活を果たした背景には、労働運動に参加して組織労働者の支持を固めてきた他、お年寄りの見回りや雪下ろしの手伝い等の住民密着型の活動を重ねてきた経緯があることも教えてくれました。非正規労働者の組織化について尋ねた大椿ゆうこに対しては、食べて暮らしていくこと自体に苦労する不安定生活を送る非正規労働者を政治運動の場に招き入れることは難しいとしながらも、労働者組織率を上げ、非正規労働者の待遇を改善すれば、運動への参加も広がると考えているとの答えでした。

祖国革新党~社会権先進国を目指す~

祖国革新党は文在寅政権下で法務部長官を務めた曹国氏が今年3月に結党した政党です。極めつけに若い政党ですが、4月の総選ではいきなり12議席を獲得しました。社民党との懇談には金竣享(キム・ジュニョン)党代表権限代行、申荘植(シン・ジャンシク)院内副代表兼代弁人、金載原(キム・ジェウォン)院内副代表、李海珉(イ・ヘミン)広報委員長、車圭根(チャ・ギュグン)党代表秘書室長の5人の国会議員が参席して下さり、党が掲げる検察改革、「社会権先進国第7共和国構想」、LINE Yahoo問題等について議論しました。

検察改革については、現在検察が捜査権と起訴権の両方を掌握していることが「検察独裁」の原因だとして、検察庁を廃止して捜査権を持つ重大犯罪捜査庁と起訴権を持つ公訴庁という別々の組織を新設すること、捜査における人権侵害を防止するための捜査節次(手続)法を制定すること等を掲げています。

また、社会権の具体的要素としては、①教育権、②労働権、③文化権、④ケア権、⑤健康権、⑥環境権、⑦住居権、⑧デジタル権を掲げているとのことです。現在韓国の勤労基準法は常時雇用する勤労者数が4人以下の事業場には適用されません。また、プラットフォーム労働者や特殊雇用労働者(日本の一人親方や個人事業主に相当する)等、従来の勤労者(労働者)概念に該当しない労働者は労働法制の保護から除外されています。そこで、全ての労働者の「労働権」の保障のため、現行労働法に保護されない働き方をしている労働者も保護の範囲内に含めるための法整備を目指しているそうです。

また、住居権については、とりわけ首都圏に賃貸生活者が多く、家賃の負担が重いうえ、家賃が払えなくなれば家を失ってしまう現状に問題意識を持っており、家主に対して弱い立場に置かれる賃貸契約者の権限を守ると共に、「住宅文化」を作ることを目指しているそうです。

現状、韓国は社会権について、日本同様「プログラム規定説」を採っており、国家は社会権保障のための立法措置を行う努力義務のみを負っているとされているそうです。祖国革新党は、国家が社会権保障の義務を負うことを明確化するための憲法改正を目指しているとのことで、まさに「社会権先進国」を作ろうとする心意気を感じました。

最後のLINE Yahoo問題とは、LINEの利用者情報がシステムを委託されていたIT企業・NAVERを介して大規模に流出した問題を受け、LINE Yahooの親会社にNAVERが50%出資する現在の資本関係を見直すよう日本の総務省が求めた問題です。この問題を担当する李広報委員長からは、「経済安全保障」を理由に、日本政府が韓国企業の活動に介入するのは異例で、両国関係に悪影響を及ぼすとの懸念が示されました。なお、韓国から大きな反発が上がったことで、日本政府は資本関係見直しの要求を当面断念したと報道されました。

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