3月13日、厚生労働委員会で質問に立ちました。今回は「戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法の一部を改正する法律案」の法案審議。戦争で犠牲にされた軍人・軍属の遺族(3親等内の親族)に5年償還の記名国債を2回(つまり向こう10年間)支給するという内容で、戦後10年ずつの節目に改正が重ねられています。
特別弔慰金そのものに異議はないのですが、軍人・軍属の遺族だけに特別弔慰金を支給し、民間人の戦争犠牲者遺族に何の補償もないことには大きな問題があります。国は「戦争被害受忍論」(「戦争という国の存亡をかけた非常事態のもとでは、全ての国民は多かれ少なかれ生命、身体、財産の被害を耐え忍ぶべく余儀なくされるが、それは国民が等しく受忍しなければならないやむをえない犠牲であり、国家は被害を補償する法的義務を負わない」という論理。1968年の「在外財産補償請求事件」最高裁判決がリーディングケース)を採り、空襲被害者をはじめ、民間人戦争犠牲者への一切の保障を拒んできました。
10年後には戦争体験者が全くいなくなっているかもしれません。今年は、国が起こした戦争で苦しめられた方々に、政府が直接謝罪出来る最後の機会かもしれません。「二度と同じ過ちを犯さないためにも、国はしっかり戦争被害者全員に謝罪・補償すべき」との思いを込めて質問しました。
今回の質問を作成するにあたっては、「全国空襲被害者連絡協議会」の皆様に大変お世話になりました。この場をお借りして感謝申し上げます。
特別弔慰金の意味は?
大椿ゆうこ/ 特別弔慰金の位置付けについて質問する。国が起こした戦争で尊い命が犠牲にされたことに対する謝罪のためなのか、それとも軍人軍属として国を守るために命を懸けて戦ったことへの感謝・敬意の意味なのか、どちらか?
政府参考人[厚労省]/ 今日の我が国の平和と繁栄の礎となった戦没者等の尊い犠牲に思いを致し、1965年以降、戦後何十年といった特別な機会を捉え、国として弔慰の意を示すということだ。戦没者の方を弔い、そして御遺族の方を慰めるため、記名国債の交付により支給している。
大椿ゆうこ/ そこに謝罪の意は込められているか?
政府参考人[厚労省]/ 謝罪ということではなく、戦没者の方を弔い、御遺族の方を慰藉をするという趣旨だ。
民間人犠牲者にも補償を!
大椿ゆうこ/ 今回質問するにあたって、空襲被害者の方々からご意見を聞かせて頂いた。空襲被害者等救済法の制定を求める全国空襲連、また超党派空襲議連の取組はご存知か? 議連がまとめた救済法案の法案骨子についてはどのような認識か?
福岡資麿厚生労働大臣/ 先の大戦で全ての国民が何らかの戦争の犠牲を被られ、一般市民の方にも筆舌に尽くし難いご苦労を体験された方が多数いらっしゃるということは十分認識している。全国空襲連や超党派空襲議連の取組については、予算委員会等でも何度も総理との間でやり取りがあったのを私も聞いている。法律案骨子は、空襲被害者に対する特別給付金の支給、また実態調査等を内容とするものだと認識しているが、政府しては、引き続きその動きを注視していきたい。
大椿ゆうこ/ 空襲被害者の方々は政府と雇用関係がなかったということを、救済の対象にしない根拠の一つとしているが、空襲被害者の方々はただ戦争に巻き込まれて被害を受けたわけではない。
1937年4月に制定された防空法は、(その後の改定で)市民に退去禁止や消火義務を課し、違反した場合の罰則規定まで設けている。戦時下、防空法が敷かれる中で消火活動を強制された結果、逃げ遅れて多くの方々が被害を受けた、お亡くなりになられたという実態がある。雇用関係になかったとはいえ、市民をそういう形で戦争に駆り出していたのだと考えている。国により犠牲にされたという点では、軍人軍属と空襲被害者を区別して取り扱うべきではないのではないか?
福岡大臣/ 特別弔慰金は、戦後何十年といった特別の機会を捉え、国と雇用関係又はこれに類似する特別の関係にある軍人軍属等のご遺族に改めて弔慰の意を表するために支給している。そのため、国家が強制的に戦地における戦闘行為や軍需工場における就労等に参加させたという事情にない一般戦災者の方々については対象としていない。
大椿ゆうこ/ 防空法のことでいえば、国が市民に、民間人に対して命令を出している。罰則規定も設けている。このことに国の責任はないのか?
福岡大臣/ 旧防空法については、国民一般に対して緊急時に防火に従事するなどの義務を課していたことは承知している。しかしながら、このような場合でも、国との間に一定の雇用又は雇用類似の関係があったものとは言えないことから、特別な弔慰金の対象とはしていない。旧防空法においても、地方長官による従事命令が下され、義務違反を起こした場合に罰則が科されるというように、国の強い強制力の下に防空監視所で勤務していた警防団員等については、戦傷病者戦没者遺族等援護法の対象としている。
大椿ゆうこ/ 市民に対してそのような命令を行ったことが適切ではなかったのではないかと言う、政府の反省はないのか?
政府参考人[厚労省]/ 旧防空法等とは、国民一般に対して緊急時に防火に従事するという義務を課していた。ただ、一定の雇用ないし雇用類似の関係があったというふうなことには言えないことから、特別弔慰金の対象とはしていない。こういった取扱いについては、これまで司法の判断においても、軍人軍属を対象として補償の措置を講じていることに合理的な根拠があると判示されていると承知している。
大椿ゆうこ/ 空襲被害者の方々、またその遺族は、戦後も様々な困難を経験してこられた。戦争によって障害を持ち、仕事に就くことができない故に貧困を経験してこられた方もいれば、戦争PTSDなど複合的な困難(※戦後の差別も含む)を抱えながら生き延びていらっしゃる。ご高齢になられた方もいれば、お亡くなりになった方々もいらっしゃる。空襲被害者の方々への救済策を検討するために、国は、被害者が生きていらっしゃる今、被害実態を調査すべきではないか?
福岡大臣/ 超党派の議連で議論されている議員立法の中にそういった趣旨が含まれており、今まさに検討されているものと承知している。まず、その動きをしっかりと注視してまいりたい。
大椿ゆうこ/ 時間も限られている。議連を待つ前に、政府の方が動こうという考えはないのか?
福岡大臣/ 今後どうやっていくかということについては、議員立法等の動きを注視していきたい。