この日は消費者問題に関する特別委員会、公益通報者保護法改定案の最後の審議日でした。
質問を作るに際しては、公益通報をしたことで酷い配置転換をされ、裁判で闘った当事者の方や、その肩を支える弁護士の方から、様々なご助言や、後押しの言葉を頂きました。今回の改定案で一番問題とされたのが、通報を理由とする配置転換に刑事罰や立証責任の転換が導入されなかったことです。そもそも改定案を作るに際して開かれた検討会には当事者は招かれず、だからこそ当事者の願いに沿う法案にならなかったのではないか、と懸念しています。高額療養費の自己負担限度額引き上げの際も、難病患者の声を聴かないまま決めたことが問題とされました。大椿ゆうこは、次は必ず当事者の声を聴いて欲しい、と求めました。
また、兵庫県問題についても更問い。第三者委員会が、通報を行った元県民局長の私的情報の漏洩は知事の支持の下で行われた可能性が高いと指摘したことを受け、知事の行為は公益通報者保護法や地方自治法に違背するのではないか、と追及しました。この日は、会派を超えて斎藤知事問題を取り上げ、斎藤知事を推したはずの維新の松沢成文議員まで、「国は知事を刑事告発せよ」と言うくらい。斎藤知事の一連の問題は、日本の法秩序そのものへの挑戦として、国会でも大変重大に受け止められています。
兵庫県知事の行為は違法!
大椿ゆうこ/ まず、兵庫県の文書問題について質問する。消費者庁は5月22日、各地方公共団体の首長宛てに「行政機関における公益通報者保護法に関わる対応の徹底について」と題した文書を発出された。法が定める体制整備義務について、「窓口の設置等、内部公益通報に限定する部分もあれば、不利益な取扱いの防止に関する措置等、行政機関に対する二号通報、報道機関等に対する三号通報をした者も含めて措置をとることを求めている部分もあります」という部分に下線を引いて強調されており、文書の最後には、「なお、本通知は、地方自治法第245条の4(技術的助言)に基づくものです」と書かれていた。一般的な助言から一歩踏み込んで技術的助言を行ったことを、5月16日の委員会でそれを求めた一人として高く評価し、感謝申し上げる。
この文書が発出される前の5月20日、消費者庁の担当者に確認したところ、消費者庁と兵庫県庁の事務方の確認作業の中では、知事と消費者庁の法解釈に齟齬はないということの確認が取れているという回答を頂いた。大臣もそのように答弁されたが、私はその言葉を信じている。
しかしながら、斎藤知事は記者会見で従来の立場を崩していない。事務方の確認が取れているのは理解しているが、対外的に最も影響力のある知事の発言に消費者庁との齟齬があり続けている。消費者庁の助言を受ければ、「今まで自分が言っていたことは過ちでした」と、普通の知事ならば言うところだ。その一言がないことは、大変ゆゆしき問題ではないかと思っている。この点について、消費者庁はどのように認識しているか。今後改善が見られないようであれば、次の手を打つ考えはあるか?
政府参考人[消費者庁]/ 経緯については、ご指摘の通りと我々も認識している。4月8日に消費者庁から兵庫県に対して行った法令の解釈に関する一般的な助言について、5月14日に知事の法解釈が消費者庁の法解釈と齟齬がないということを、我々としては兵庫県に確認している。また、兵庫県知事は、その後の会見で、消費者庁から一般的な法解釈としての指摘がなされたことは大変重く受け止めなければならない、法の趣旨に沿って対応していきたいという旨の発言をされたと認識している。このため、兵庫県だけに対して、同じ内容について更に何らかの対応を行うことは今は検討していない。
大椿ゆうこ/ この文書を重く受け止めるのであれば、「今まで言っていたことは間違いでした」と言えばよいところ、その言葉がないために、みんなもやもやとしているのだと思う。本来であれば、その一言ぐらい言うのが知事の立場ではないかと私は思っている。
斎藤知事については、第三者委員会が5月27日、通報を行った元県民局長のプライバシー情報を県議らに流出させたことが斎藤知事・片山元副知事の指示の下に行われた可能性が高いと指摘した。一般論で結構だが、通報者のプライバシー情報を探り出すことそのものも、まして探り出したプライバシー情報を外部に流出させることも、法が禁じる不利益取扱いに当たると考えて良いか。
政府参考人[消費者庁]/ 個別事案について消費者庁としてコメントは差し控えるが、一般論として、公益通報をしたことを理由とする不利益な取扱いには、事実上の嫌がらせなど、精神上・生活上の取扱いに関することも含まれる。従って、公益通報したことを理由として、公益通報者のプライバシー情報を探り出し、探り出したプライバシー情報を外部に流出させることも、法が禁ずる不利益な取扱いに該当し得ると考えている。
大椿ゆうこ/ そもそも、地方公務員が業務上知り得た秘密を漏洩させれば、地方公務員法第34条違反である。地方公共団体の首長や議員のような特別職の地方公務員が守秘義務違反を教唆した場合はどうなるか?
政府参考人[総務省]/ 地方公務員法第34条第1項において、一般職の地方公務員は職務上知り得た秘密を漏らしてはならないとされており、第60条第2項において、この規定に違反し秘密を漏らした者に対する罰則が規定されている。また、第62条においては、そのような行為を企て、命じ、故意にこれを容認し、唆し、またはその幇助をした者に対する罰則が規定されている。第62条の適用については、下級審の裁判例で、特別職の地方公務員に適用された事例がある。
大椿ゆうこ/ 特別職にも適用されたというのは、いつのどの判例か?
政府参考人[総務省]/ 守秘義務の違反ではない事例だが、2006年に元呉市助役に対して適用された事例ある。
大椿ゆうこ/ 民間の事業者内で通報者の探索を唆す行為、または探索に際して集められた情報を外部に漏洩したり、漏洩を唆す行為は、公益通報者保護法において規制されるのか?
政府参考人[消費者庁]/ 公益通報者を探索する行為は現行法でも不利益な取扱いに該当し得ることから、実際に通報者探索が行われた場合には、探索行為を教唆した者も損害賠償請求の対象となることが想定される。また、公益通報者保護法においては、常時使用する労働者の数が300人超の事業者に対し、内部の労働者等からの公益通報に対応する従事者を指定する義務を設けている。この従事者が守秘義務に違反して通報者を特定させる情報を故意に漏らした場合には刑事罰の対象となっており、これにより、従事者の守秘義務違反を教唆した者については教唆犯が成立し得るものと考えている。