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3/21(木)は、「消費者問題に関する特別委員会」で質問をしました。テーマは貧困ビジネスについて。一般社団法人「反貧困ネットワーク」の瀬戸大作事務局長と共に視察をした悪質な事例を具体的に取り上げ、消費者保護・悪質業者の排除に取り組む消費者庁の認識を糾しました。業者の取り締まりについて直接担当するのは厚生労働省や国土交通省なので、なかなか難しい質問でしたが、悪質な業者が行政の福祉の枠内で跋扈している現状に、省庁の垣根を超えて取り組んで欲しいと要望しました。
質疑のハイライトをご紹介します(※発言は適宜要約・省略しています)。質疑全体は、参議院インターネット審議中継からご覧いただけます。
消費者庁・大臣の「貧困ビジネス」に対する認識は?
大椿ゆうこ) 生活に困窮し住居がない消費者に「初期費用ゼロ」「低家賃」「生活用品無料支給」「今すぐ住めるお部屋見付かります」等の広告を見て不動産貸借契約を結んだころ、多額の手数料や初期費用を取られ、相場以上の家賃を支払うことになり、様々な名目の費用を差し引かれる被害が出ていることを大臣は知っているか? (景品表示法で禁止される不当表示である)有利誤認表示に当たると思うが、大臣の認識は? 消費者を保護し、このような被害をなくすため、消費者庁として何が出来るのか?
自見はなこ内閣府特命担当大臣) 住宅の賃貸借契約については、消費生活相談窓口に相談が寄せられた場合、まずは契約書を確認して貸主と交渉をする、それでも解消しない場合には専門の相談窓口を紹介するなどのアドバイスを行っている。消費者庁としては、地域の見守りネットワーク(※2014年に改正された消費者安全法に基づき、高齢者・障がい者・認知症等により判断力が不十分となった方の消費者被害の防止のために設置される消費者安全確保地域協議会)と福祉との連携を促進している他、孤独・孤立と消費者被害の関連も踏まえて適格消費者団体と孤独・孤立支援団体との連携も促進しており、シンポジウムの開催も行っている。
大椿ゆうこ) 悪質貧困ビジネスについて、大臣がこの言葉を聞いたり、または被害の詳細を見聞きしたことはあるか?
自見はなこ内閣府特命担当大臣) 議員活動の中で見聞きしたり、個別な陳情を受けたりしたことはある。
視察で見た貧困ビジネスの実態
大椿ゆうこ) 「反貧困ネットワーク」の瀬戸大作・事務局長と視察した2例を紹介する。
1例目は十代のAさん。住居を失い、町田福祉事務所で生活保護の相談をしたところ、内見をすることもなく、契約を結んだ。アパート経営会社はAさんに新規の口座の開設求め、その通帳とキャッシュカードを回収し、全額生活保護費を徴収した上で入居者宅を訪問する際に残りのお金を本人に渡す方式を採った。Aさんは自分の金銭を管理する能力があり、通帳とキャッシュカードを渡すのを拒否すると、今度は東京都福祉局・町田市福祉事務所のケースワーカーが、Aさんに無断で二回目以降の保護費をアパート経営会社に振り込むようになった。福祉事務所が経営会社の手口を知った上で日常的に連携を取っているならば、非常に大きな問題だと思う。
2例目は三十代のBさん。寮付きの仕事を辞めたことで住居を失い、インターネットで見付けた一般社団法人に相談し、即日入居となった。自分も横浜市神奈川区にあるその物件を訪問したが、山肌のところに建っているというような物件だった。築60年で痛みがひどく、茶色のクラフト紙をカーテンに使っていたが、家賃は住宅扶助費の上限52000円と共益費7000円の計59000円。加えて、ネットで4999円で販売されている薄い布団セットを2万円で買わされた。Bさんは直前まで働いていたので、10万5000円の所持金があったが、経費を徴収して所持金を使い切らせ、法人が生活保護申請の同行をする流れになっていた。そして、この法人がBさんと結んだ覚書には、「生活保護の受給が出来なかった場合には物件から退去する」という定めがある。Bさんの生活保護費を搾り取ることが目的なのだと考えられる。
家を失った方々は、このような悪質な貧困ビジネスを前に冷静な判断をして公正な契約を結べる環境にはいないと思う。そういう方々を保護するのが消費者庁の仕事だと思うが、大臣はどう考えるか?
自見はなこ内閣府特命担当大臣) 消費者庁としては、地域の見守りネットワーク(消費者安全確保地域協議会)において、行政の福祉との連携を非常に重要視している。例えば、2021年10月、厚生労働省社会・援護局地域福祉課長と消費者庁地方協力課長の連名で「重層的支援体制整備事業と消費者安全確保地域協議会制度との連携について」という通知を出し、その中で「アウトリーチ等を通じた支援の強化が必要と思われる事例については、アウトリーチ支援事業者に情報提供し、必要に応じて連携して支援すること」との技術的助言を行っている。
大臣・消費者庁は貧困ビジネス規制の旗振り役になるべき
大椿ゆうこ) 先ほど紹介したAさんが相談に行ったのは町田福祉事務所で、そこで紹介されたのが貧困ビジネスを行う住宅確保要配慮者居住支援法人(※以下、「居住支援法人」と表記)だった。視察のため瀬戸さんと一緒に私が町田福祉事務所に行ったときに、ちょうど生活保護費の支給日で、問題の事業者の職員が別の若い方を連れて事務所を訪ね、保護費を受け取っていた。行政が居住支援法人の質をきちんと評価することが非常に重要だと思う。悪質貧困ビジネスは、消費者庁だけでの解決は無理で、厚生労働省・総務省等、色々な省庁と手を組んで解決していかなければいけない問題だ。今国会では住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)等の一部を改正する法律案というのが出されることになっている。この法改正の中で、生活困窮者支援を居住支援法人に丸投げしようとしているが、貧困ビジネスに繋がるのではないかと多くの不安の声が出ている。是非、大臣・消費者庁が旗振り役になり、他省庁と連携をして貧困ビジネスの実態調査に乗り出し、行政・消費者に注意喚起して頂きたい。
自見はなこ内閣府特命担当大臣) 見守りネットワーク(消費者安全確保地域協議会)には地域包括支援センター等と共に警察も入っている。見守りネットワークの充実強化により、消費者被害の早期発見・未然防止を図りたい。
大椿ゆうこ) 物価高の中、貧困に陥っている人たちをカモにするビジネスを絶対に許してはいけないと思う。どうか大臣には旗振り役になって、他の省庁と一緒にこの問題解決に向けて取り組んで頂きたい。