【報告・解説】4/4(木) 厚生労働委員会で質問!(セキュリティクリアランス)

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4月4日(木)は、厚生労働委員会で「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」(セキュリティクリアランス法案)に関する質問をしました。この法案は、「重要経済安保情報」(国民生活・経済活動にとって重要な役務・物資の提供体制・供給網に関する情報で、漏らされれば安全保障に支障を与える恐れがあるため、特に秘匿することが必要なもの)を取り扱う労働者に対し、「身辺調査」を行って情報を漏らす可能性がないか、国が「適正評価(セキュリティクリアランス)」を行う法案です。

身辺調査の項目は次の7つ。

  1. 「重要経済安保情報」を扱う労働者(以下、「評価対象者」と表記)、その配偶者・父母・子・兄弟姉妹、並びに配偶者の父母・子、及び家族を除く同居人が、スパイ・テロ活動と関係しているかについての情報。評価対象者・その家族等の氏名・生年月日・国籍(過去に有していたものを含む)・住所を含む。
  2. 評価対象者の犯罪歴・懲戒歴
  3. 評価対象者の、薬物の濫用とその影響
  4. 評価対象者の、情報の取り扱いに関する違法行為の経歴
  5. 評価対象者の精神疾患について
  6. 評価対象者の飲酒の節度について
  7. 評価対象者の経済的状況について

これらに関する情報を集めるため、適正評価を行う内閣総理大臣や行政機関の長は、労働者の関係者(医師・カウンセラー・自助グループ等、範囲は相当広い)に必要事項の報告を求めることも可能になっています。労働者のみならず、その家族等のプライバシーに触れる繊細な情報を、国家が一元的に調査するため、人権侵害の恐れが懸念されます

適正評価を取得し、「重要経済安保情報」の取り扱いを許された労働者は、秘密を漏洩した際、厳罰(5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金、またはこれらを併科)が科されます。秘密を取り扱う労働者に、秘密を漏らすよう「共謀・教唆・煽動」した人にも罰則があります(3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)。

法案の内容は特定秘密保護法と似ていますが、対象が公務員から民間の労働者に拡大されるため、「経済版秘密保護法」とも呼ばれています。労働者の人権を脅かし、差別を禁じたこれまでの労働法制を根本から覆す法案なのに、衆議院では専ら内閣委員会で審理され(一日だけ経済産業委員会と連合審査)、厚生労働委員会で全く議論されていません。そのことに危機感を持ち、厚生労働委員会で取り上げました。

法案は4月5日、会派を組む立憲民主党も賛成し、衆議院内閣委員会で可決されました。今後審理は参議院に移ります。

質疑のハイライトをご紹介します(※発言は適宜要約・省略しています)。質疑全体は、参議院インターネット審議中継からご覧いただけます。

身辺調査は差別を生む!

大椿ゆうこ/ 家族関係、家族の住所、家族及び同居人の国籍、本人の精神病歴などは就職差別につながるとして、厚労省が民間企業に対し採用選考時に配慮するよう呼び掛けている項目である。今法案ではセキュリティクリアランスを受ける労働者の同意はとっても、その家族等からは同意を取らないまま身辺調査を行うが、差別を誘発しないために注意喚起をしてきた厚労省の方針に真っ向から反対するのでは?

政府参考人[厚労省]/ 公正な採用選考が行われるよう、本籍や家族の状況など本人に責任のない事項や、思想・生活信条など本来自由であるべき事項を把握することなどは、就職差別につながる恐れがあるため、事業主に対し把握しないよう配慮を求めている。雇用全般にわたって、差別的取扱いが行われることは当然適切でないと考えている。

大椿ゆうこ/ 一般的に、精神疾患に限らず、労働者の既往歴を尋ねることには慎重であるべきと考えるが、厚労省の見解は?

政府参考人[厚労省]/労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」において、事業者は、心身の状態の情報の取扱いなどについて、労働者が同意しないことを理由として不利益取扱いを行ってはいけないと定めている。

大椿ゆうこ/ 本法案では家族や同居人の国籍も調査対象になっている。労働者の家族や同居人の国籍を過去に有していた国籍まで調査することは、国籍を理由にした差別的取扱いを誘発する可能性がある。国籍による差別的取扱いを禁じた労働基準法第三条の精神にも逆行すると思うが、厚労省の見解は?

政府参考人[厚労省]/ 労働者の国籍のみを理由として労働条件について差別的取扱いを行うことは、労働基準法第三条に違反して認められない

大椿ゆうこ/ 適性評価を取得できなかったことを直接の理由として、事業主が労働者の望まぬ配置転換や解雇を行った場合、裁量権・解雇権の濫用に当たるか?

政府参考人[厚労省]/ 解雇については、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、権利濫用として無効となる(労働契約法第16条)。配置転換については、業務上の必要性がない場合や、不当な動機・目的による場合、権利濫用として無効となる。

法案第16条は、適正評価に同意・合格しなかったことについて、重要経済安保情報の保護以外の目的に利用することを禁じています。しかし、重要経済安保情報の保護のためと言えば、配置転換や解雇もあり得ることになります。そのため、本法案第16条ではなく、労働契約法等既存の労働法との関係において、適正評価不合格者を配置転換・解雇することがどのように判断されるか追及しました。

大椿ゆうこ/ 本法案において、評価対象者である労働者が適性評価を取得できなかった場合、その理由は評価対象者本人にのみ通知され、事業主は知り得ないとされている。しかし、事業主が不合格理由の報告を強要する可能性は十分にある。本法案はそのような行為を禁止しているか?

政府参考人[内閣官房]/ 不合格理由は、本人の個別の事情に基づくものであるため、事業者には通知されないこととなっている。これらの規定の趣旨に鑑みれば、事業者がその理由を聞き出そうとすること自体が適当ではないと考えており、運用基準等の中で示していきたい。

大椿ゆうこ/ 現時点では法案の中に示されていないという認識で良いか?

政府参考人[内閣官房]/ 現時点では、理由を聞きだすことを禁じる規定はない

大椿ゆうこ/ 事業者が労働者から適性評価の不合格理由を聞き出し、その理由を根拠に労働者の望まぬ配置転換や解雇を行った場合、裁量権・解雇権の濫用に当たるか?

政府参考人[厚労省]/ 解雇・配置転換については先ほど答えた通り。

事業者が不合格理由を聞き出すことを禁止する法文がないので、事業者が不合格理由を聞き出し、労働者の家族の国籍や精神病歴などを知り、それを理由に差別的取扱いを行う可能性が残されています。現行の労働法が禁じる差別が行われる可能性があるのに、しっかり法案の中で明示的に禁止せず、「後は運用基準で決める」というのは無責任ではないでしょうか。
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