【報告・解説】4/4(木) 厚生労働委員会で質問!(セキュリティクリアランス)

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相談出来ない社会になる?

大椿ゆうこ/ 本法案では、評価対象者である労働者の知人、その他関係者、さらには公私の団体に照会して必要事項の報告を求めることが出来るとされている。医師・カウンセラーも照会の対象になり、評価対象者の精神疾患の既往歴などを聞き取られることになる。医師・カウンセラーには守秘義務遵守の原則があるはずだが、本法案が成立したからと言って、その原則は変えられるのか?

政府参考人[厚労省]/ 本法案により守秘義務の取扱いの変更は行われない。

大椿ゆうこ/ 医師・カウンセラー等が報告を求められた場合、自らの意思で情報提供の範囲を制限する、または情報提供に応じない自由は確保されるか?

政府参考人[内閣官房]/ 照会を受けた機関には、回答すべき法令上の義務が生じるため、基本的には守秘義務規定の除外となる。ただ、照会を受けた機関が回答を強制する措置はなく、回答拒否に対する罰則もない。

いくら労働者の合意を得てから情報収集を行うとはいえ、医師・カウンセラー等にも良心はありますし、「労働者のためにこれは言うべきでない」と思う内容がある場合も十分考えられます。本法案第12条は、関係者や公私の団体に「必要な事項の報告を求めることができる」と定めていますが、報告を求められた側は応じなければならない義務があるとは定めていません。相談内容が全て国に筒抜けになる制度が出来れば、誰も安心して相談出来ない社会になるのではないでしょうか?

大椿ゆうこ/ 重要経済安保情報を取り扱う業務に従事している労働者が、職場で不利益な取扱いを受けたり、労災に遭ったりすることも考えられる。その際、弁護士・労働組合・労基署等に相談したいと思っても、相談自体が機密情報の漏洩に当たる可能性があるため相談を躊躇してしまうと考えられる。また、相談を受けた側も、相談に乗ることによって秘密漏えいをそそのかしたと受け取られる可能性があるため、相談を受けること自体を躊躇してしまうとも考えられる。労働者が第三者に相談する権利をどのように保障するのか?

政府参考人[内閣官房]/ 重要経済安保情報に接する中で発生した労働災害等であっても、機微情報そのものの内容を示すことなく相談することは可能だと考える。

大椿ゆうこ/ 私は様々な労働相談を受けてきた。詳細を聴きながら判断していくため、機微情報に触れずに自分の状況を説明することが難しいということは当然あり得る。機微な問題に触れる部分は話すなと言うのか?

政府参考人[内閣官房]/ 本法案は情報そのものを保全するものなので、その情報についてはしっかりと保全して頂く必要がある。

大椿ゆうこ/ 労働者が、適性評価が不当である、または適性評価の結果によって事業主から不利益取扱いを受けた、またはその両方によって不利益を受けた場合、労働者はそれぞれどこに訴えれば良いのか?それぞれの場合について、どのような救済方法があるのか?

政府参考人[内閣官房]/ 不利益取扱いについては、主体は事業者なので、不利益取扱いを受けた従業者は事業者に対してその取消しや改善を求めたり、最終的には裁判を起こすことが考えられる。また、適性評価を実施する行政機関や制度を所管する内閣府に相談窓口を設けることも考えているので、そこに相談することも可能である。

大椿ゆうこ/ 不利益取扱いの原因を作ったのは、調査を行った国の側なのに、事業者と労働者に丸投げするのは無責任ではないか。国には、不利益取扱いの要因を作り出すことを調査項目として挙げているという認識が必要だ。運用についてはこれから議論をするというような回答だが、様々なケースに関して何も具体的な対応策が見えていない中で、内閣官房は本当にこの法案を進めても大丈夫なのか? 労働者の不利益にならないと言えるのか?

政府参考人[内閣官房]/ 今後統一的な運用基準等を定める中で、どういった行為が不利益取扱いに該当するのか明確に記載した上で、そういった行為が行われないように実効性のある担保をしていきたい。

本法案で用意されている救済手段は、適正評価を行った行政機関の長に苦情の申出が出来るというもので、行政不服審査法に基づく不服申立(審査請求)すら出来ません。評価を行った本人に苦情を言ったところで結果が覆るとも思えず、調査・評価を行う国等が用意した相談機関が果たして労働者の救済を真に担保してくれるでしょうか? 事業主が不利益取り扱いを行えば民事訴訟を提起すればよいと言いますが、訴訟の提起そのものの負担は重く、「適正評価の目的外利用によって不利益取り扱いがなされた」と立証することは困難なのではないかと思います。労働者の権利を大きく侵害し得る内容を含む法案なのに、救済制度がほとんど用意されていないことは、本法案の重大な欠陥です。

大椿ゆうこ/ 不利益取扱いをしたことに対する罰則規定はあるか?

政府参考人[内閣官房]/ 不利益取扱いをしてはいけないということは、事業者と政府の間で結ぶ秘密保持契約の中にも明記したいと考えている。

大椿ゆうこ/ 現段階では明記するかどうか定まっていないということか?

政府参考人[内閣官房]/ 今後定める統一的な運用基準等の次元であり、法律にはそのような規定はない

大椿ゆうこ/ 最後に、大臣に質問したい。経済安全保障法制に関する有識者会議では、「企業は労働法制等の関係で民間がバックグラウンドチェックを行うことは難しい」「実際、その従業員がどういった人物であるかについて国籍も含めて差別的に扱うことができない」(第2回、議事要旨p.8)、「今は、厚生労働省の公正採用選考のガイドライン、採用選考時における就職差別を回避するために多くの質問を制限している…(中略)…この制度は国家安全保障に関わる技術等の秘密情報の取扱いを行うことが見込まれる職の募集に関してだけ例外的に適用することにしないと濫用される可能性がある…(中略)…規則レベルできっちりと定めていただきたい」(第9回、議事要旨p.14)などの発言がされている。労働者側委員として出席した連合は、労使の十分な事前協議をすることや適性評価の運用・対象業務に関する労使協定を締結することを強く求めたが、産業界の反発もあり、法文化されなかった。このままでは、適性評価の対象となる労働者に最も大きな負担が掛かることは間違いないく、労働者が泣き寝入りを強いられる可能性が高い。厚労省として、労働者保護の立場から、制度作成段階から積極的に関わる必要があったのと考える。今からでも、労働者とその家族の人権を侵害し、周囲に密告を奨励するかのような法案の内容に、武見大臣には歯止めを掛けて欲しい。行き過ぎたところに歯止めをかけ修正するよう、大臣間で協議することは出来ないか。

武見厚生労働大臣/ 本法案は内閣として提出している法案なので、これに対する評価は差し控えたい。一般論として、公正な採用選考の観点から、就職差別に繋がる恐れがある事項の収集は原則認められない。他方、雇用主が応募者からどのような事項を把握することが適当かは一概に整理出来ず、特別な職業上の必要性が存在するなど、個別に合理性・必要性があるか判断をしなければならないと考えている。

大椿ゆうこ/ これまで厚生労働省としては、大臣含め、就職差別・職場内での差別を許さないという立場で厚生労働行政をしてきたと思う。本法案は、そこを徹底的に覆していく中身ではないかと思う。是非とも、厚生労働省としても、この法案についてしっかりと審議する立場を示して頂きたい。

質問の様子はこちらの動画からご覧いただけます。

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