【報告・解説】4/12(金) 消費者問題に関する特別委員会で質問!(機能性表示食品制度)

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4月12日(金)は、消費者問題に関する特別委員会で質問に立ちました。取り上げたテーマは、紅麴問題で注目されている機能性表示食品制度について。安倍政権下の規制緩和で作られたこの制度ですが、その中身がしっかり消費者に伝わっているか、食品の安全性・有効性を担保する制度になっているか、改めて検証が必要です。ちなみに、健康・医療戦略推進本部参与時代として食品表示の規制緩和を強く主張したのは、夢洲への万博誘致の旗振り役で、現在「大阪ヘルスケアパビリオン」総合プロデューサーを務めている森下竜一氏です。質問の最後では、彼が政策決定に与えた影響についても質問しました。

質疑のハイライトをご紹介します(※発言は適宜要約・省略しています)。質疑全体は、参議院インターネット審議中継からご覧いただけます。

機能性表示食品制度は安倍政権による規制緩和の産物

大椿ゆうこ/ 「痩せたい」「肌つやを良くしたい」という消費者心理や、特定保健用食品・栄養機能食品・機能性表示食品の違いに関する消費者への周知不足という状況に便乗し、機能性表示食品が市場を大きく拡大させたように思うが、大臣はこの状況についてどのように受け止めているか?

自見はなこ内閣府特命担当大臣/ 昔は特保が珍しくCMに出ていたと思うが、2015年以降はむしろ機能性表示食品の方が目にする回数が増えているのではないかと思う。3つの食品表示の違いがどこにあるのかということが一般の消費者に分かりづらいという問題意識は理解できる。機能性表示食品は、事業者が事業者の責任で科学的根拠に基づいた機能性を表示することが出来る任意の表示制度で、事業者には機能性・安全性について国の評価を受けていない旨、また疾病の診断・治療・予防を目的としたものではない旨を表示することを義務付けている。

大椿ゆうこ/ 2013年6月14日、当時の安倍内閣は「日本再興戦略 Japan is Back」を閣議決定し、米国のダイエタリーサプリメント(DS)表示制度を参考に、いわゆる健康食品等の加工食品及び農林水産物に関し、企業等の責任において科学的根拠を基に機能性を表示できる新たな方策を実施するということを決めた。その後、食品の新たな機能性表示制度に関する検討会が開催され、機能性表示制度が作られたが、この閣議決定が議論の方向性を予め規定してしまっていたのではないかなという印象を抱いた。当初から安全性・有効性に問題があると指摘されていたアメリカの制度を土台にすると閣議決定したことで、「企業責任による表示」「許可制ではなく届出制」という結論が検討会以前に作られたのではないかと懸念するが、消費者庁としては当時の議論の過程をどのように検証・総括しているか?

政府参考人[消費者庁]/ 検討会においては、健康被害等の情報収集・危険な商品の流通防止措置に関する対応方針についても活発な議論が行われ、健康被害に関する情報が得られた場合には、食品衛生法や消費者安全法に規定された報告ルート等により必要に応じて注意喚起・販売禁止等の措置が講じられ、加えて企業自らによる健康被害等の情報収集体制を整備するという結論に至った。その議論を踏まえ、機能性表示食品の届出を行う際の届出事項として健康被害情報の収集体制が明記され、届出ガイドラインは健康被害発生時、速やかに行政機関への報告するよう求める内容になった。

ガイドラインには法的拘束力がなく、ご承知の通り、小林製薬が健康被害を公表したのは最初の症例が社に報告された1月15日から2か月以上経過した3月22日でした。
大椿ゆうこ/ アメリカのDS制度を参考にしたとはいえ、日本の機能性表示食品制度は幾つかのアメリカとの違いがある。アメリカは錠剤・カプセル・粉末等サプリメント形状の加工食品に限定されている一方、日本の機能性表示食品は形状要件を持たず、生鮮食品・加工食品・サプリメント全てが対象になっている。成分を抽出・濃縮し、消費者が味や匂いで品質を判断しづらく、過剰摂取の可能性も高いサプリメントについては、通常の食品よりも厳しく安全性・有効性をチェックすべきだと検討会でも指摘されていた。最終的にサプリメントにも通常の食品と同じ制度で規制することにしたことについて、今から振り返って妥当な判断だったと思うか?
政府参考人[消費者庁]/ 制度創設時における検討会でも安全性確保のあり方が一つの論点だった。その中で、企業等が自主的かつ積極的に取り組むべきものとしながらも、サプリメント製造過程についてはGMP(Good Manufacturing Practice; 医薬品の製造管理及び品質管理の基準)に基づく製品管理が強く望まれると報告書も書いている。5月末までに食品の安全性確保についての方向性を取りまとめるべく検討しており、GMPについても検討に反映させたい。
2018の食品衛生法改正に伴い、2021年から全ての食品等事業所にHACCPに沿った衛生管理が義務付けられていますが、サプリメント製造過程のGMPによる管理については、企業の自主的努力に任せられています。紅麹原料を製造していた大阪の工場はGMPの認定を受けていませんでした。
大椿ゆうこ/ 製品の品質チェックのためには、商品の抜取り検査が必要だったのではないかと思う。昨年度、何品目の機能性表示食品が流通し、そのうち何品目に対して抜取り検査が行われたか? 今回被害が生じた小林製薬の商品はその対象になっていたか?
政府参考人[消費者庁]/ 2023年4月10日現在で、機能性表示食品の届出は6691件。品質を事後的にチェックすることが肝要だと考えているため、予算事業で製品の買い上げ調査を行ってきており、2017年度から2022年度まで対象にされたのは累計444品目。何を調査対象にするかということは、調査当局の手の内を明かすことになるので、回答を控えたい。
大椿ゆうこ/ 改めて確認するが、機能性表示食品の「機能」は、薬事法における医薬品の「効能・効果」とは明確に区別されているという認識で合っているか? つまり、機能性表示食品はあくまでも食品であり医薬品ではないということか?
政府参考人[消費者庁]/ 機能性表示食品は、「疾病に罹患していない者に対し、機能性関与成分によって健康の維持及び増進に資する特定の保健の目的(疾病リスクの低減に係るものを除く)が期待できる旨を科学的根拠に基づいて容器包装に表示をする食品」と定義されている(食品表示法に基づく食品表示基準第2条第1項第10号)。特定の保健の目的から疾病リスクの低減に係るものは除くと明記されており、診断・予防・治療・処置などの医学的な表現、治療・予防効果を暗示する表示、「糖尿病の方へ」といった特定の疾病の方を対象とした表示、未成年者・妊産婦・授乳婦に対して機能性を訴求するような表示は出来ないとガイドラインで明示している。従って、機能性表示食品はあくまでも健常者に対して健康の維持増進に資する特定の保健の目的が期待できる旨を表示した食品であり、人の疾病の診断・治療・予防に使用されることを目的とするものではない。この点が消費者に伝わっていないという批判は真摯に受け止め、情報発信に努めたい。

規制緩和は医療費抑制が目的?

大椿ゆうこ/ 食品表示の規制緩和を主導したのは、安倍政権下で内閣規制改革会議委員、健康・医療戦略本部戦略参与を務めた森下竜一氏である。彼は大阪市の特別顧問、大阪・関西万博の総合プロデューサーを務めている人物で、新型コロナウイルスへのDNAワクチンを作るといって国の補助金をもらいながらも開発を中止したり、自身が顧問として経営に関与している「サイエンス」を万博のスーパープレミアムパートナーにしたりするなど、大阪では顰蹙を買っている人物でもある。彼の論文「規制改革の視点からみたアベノミクスの健康医療戦略」を読むと、「社会保障費の多くを占める医療費削減に向けて、予防・健康管理サービス産業を積極的に創出していくことが求められている」と書き、自分自身で体調を管理し、治療を行う「セルフケア・セルフメディケーション」を主張している。医療費抑制効果を狙って規制緩和が始まったのではないか、「サプリメントを使って体調を維持し、多少の体調不良は自分でどうにかしろ、正規の医療品はなるだけ使うな」と医療費や医療へのアクセスを抑制することが規制緩和の狙いの中にあったのか、と懸念する。機能性表示食品制度の導入と医療費抑制との関係について答弁されたい。
政府参考人[内閣府]/ 当時規制改革会議の委員であった森下委員は、2013年2月15日の第2回規制改革会議において、「国民の健康改善を図るだけではなく、関連する産業の育成につながり雇用の増大も期待でき、増大し続ける医療費の抑制にもつながる」として、規制改革を行い、理解しやすい健康機能を表示できる制度を作ることを提案した。なお、規制改革会議は有識者会議であり、委員・専門委員が自由に透明性のある議論を行い、答申等の決定に当たって会議体としての意思決定を行うことになっている。
少子高齢化が進み、社会保障費がかさむ中、「医療費適正化」が各所で叫ばれています。しかし、政府参考人の答弁にもあるとおり、機能性表示食品はあくまで食品で、医薬品ではありません。機能性表示食品が医薬品の代替かのように扱われ、正規の医療・医薬品へのアクセスが損なわれることがないよう、注視していきたいです。
質問の様子はこちらの動画からご覧いただけます。

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