【報告・解説】4/9(火) 厚生労働委員会で質問!(生活困窮者自立支援法改正案審議)

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4月9日(火)は、厚生労働委員会で「生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案」に関する法案審議が行われました。大椿ゆうこは、3月21日の消費者問題に関する特別委員会でも取り上げた「悪質貧困ビジネス」の例を出し、新たに整備・拡充される生活困窮者に対する地域居住支援事業が貧困ビジネスの温床にならないよう求めました。また、支援の質を担保するためにも不可欠な相談員等職員の処遇改善や、生活困窮者支援のための公営住宅の活用を訴えました。

質疑のハイライトをご紹介します(※発言は適宜要約・省略しています)。質疑全体は、参議院インターネット審議中継からご覧いただけます。

悪質な貧困ビジネス業者の排除を!

大椿ゆうこ/ 「生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案」は、住宅確保が困難な者への自治体による居住に関する相談支援等を明確化し、入居時から入居中、そして退去時までの一貫した居住支援を強化することが第一の目的に掲げられている。地域居住支援事業は居住支援法人に委託することも可能ですが、その際貧困ビジネスを行う悪質業者が混じりこむことが懸念されている。厚労省として、具体的に貧困ビジネスとはどういうものであると認識しているか? また、貧困ビジネスについての実態調査を行っているか?

政府参考人[厚労省]/ 著しく狭隘で設備が十分でない劣悪な施設に住まわせ、居室やサービスに見合わない宿泊料やサービス利用料を生活保護費の中から徴収するようなものをいわゆる貧困ビジネスと言うのだと認識している。そういう施設が存在するということや、キャッシュカードの預かり等、居室の提供以外のサービスの利用を強要する不当行為があるという指摘は承知している。また、無料低額宿泊所の無届け施設にもこうした施設があると指摘されており、2022年度の自治体向けの調査によると、無届け施設があると回答した自治体は8.9%である。

大椿ゆうこ/ 厚労省では、具体的に貧困ビジネスの実態調査を行っていないということか?

政府参考人[厚労省]/ 貧困ビジネスという言葉の厳密な定義がないので、貧困ビジネスの事業者を特定するのは難しい。

大椿ゆうこ/ それでは具体的な事例を二つ紹介する(※事例紹介は3月21日の消費者問題に関する特別委員会での質疑を参照)。大臣はこの事例を聞いて、どのような感想を持つか?

武見厚生労働大臣/ これが事実ならば、あってはならぬことで、明らかにおかしいきちんと実態を調査し、是正すべきは是正するのが、福祉事務所が本来果たすべき役割だと思う

厚生労働省が法案提出にあたって作成した資料の「住まい支援に関わる取組事例」の中で、町田市は「住宅確保要配慮者からの相談に対し、社会福祉法人(居住支援法人)が希望に沿った物件探しや大家との交渉を行った上で、一部屋ごとに借り上げて又貸しするサブリース事業を実施し、見守り等の生活支援サービスを提供」している好事例として紹介されていました。その町田市において、行政が生活保護受給者を貧困ビジネス業者につないでしまっていることについて、厚生労働大臣自ら問題だと認めたのは重大です。

大椿ゆうこ/ 特に一番目の例は、町田市福祉事務所が紹介したところが貧困ビジネスだった。地域居住相談支援を民間事業者に委託する際、業者をどう見極めるかが非常に重要だと思う。行政は貧困ビジネスを企む居住支援法人等をどう見極め、不適確な居住支援法人を排除するのか、その対応策について具体的に話して欲しい。

政府参考人[厚労省]/ 福祉事務所は生活保護受給者の定期的な訪問活動等により、生活実態の把握と居住環境の確認に努めている。その際、無料低額宿泊所以外の住居も含めて、「住居・住環境が著しく劣悪な状態にある」「居室の提供以外のサービスの利用を強要するなどの不当な行為がある」場合には、転居が適当と確認したら転居を促す対応を行っている。今回の法改正で拡充させる生活困窮者居住支援事業については、福祉事務所設置自治体を実施主体とし、適切・公正・中立・効率的に事業を実施できる者に委託することが出来ると実施要領で定めている。各自治体はこれを踏まえて委託先を選定するが、事業経費は全額公費で補助しているため、委託事業者が不当な利益を得たり、事業利用者である生活困窮者本人に費用を請求したりすることは出来ないと考えている。また、福祉事務所設置自治体に対し、貧困ビジネスを行っている事業者であるか確認の上で事業委託するよう周知していく予定である。

支援に携わる相談員の待遇改善を!

大椿ゆうこ/ 生活困窮者支援事業に携わる相談員の中には、会計年度任用職員など非正規労働者が多いと聞いた。正規・非正規の割合、有期雇用か否か、給料等、雇用の実態はどうなっているか?

政府参考人[厚労省]/ 2022年度に生活困窮者自立支援制度の相談支援員等に関するアンケート調査を実施したところ、正規雇用職員が約50%、非正規雇用で常勤の職員が約34%、非正規雇用で非常勤の職員が約14%だった。また、年収は、正規雇用職員が約455万円、非正規雇用で常勤の職員が約290万円、非正規雇用で非常勤の職員が約260万円だった。

大椿ゆうこ/ 現場は、約半数が非正規で、低賃金状態である。この国は、福祉労働者の専門性を正しく評価せず、安い賃金で働かせ、有期雇用が当たり前の取替え可能な存在として扱う傾向が非常に強いと感じる。非常に大切な現場が非正規労働者に依存しているという状況を変える必要があると強く思う。支援者が頻繁に替わることは利用者にとっても不利益であり、また一緒に働いている人たちにとっても非常に効率の悪いことだと、私は有期雇用を経験してきた労働者の一人として確信を持っている。安定的な雇用の下で更に専門性を培い、そして同一の職員が長期的に支援に携われるよう、国が率先して相談員の正規化を実現していくべきだと考えるが、大臣はどのような見解か?

武見厚生労働大臣/ 生活困窮者自立支援制度は人が人を支える制度であり、各種事業を担う相談支援員は制度実施上最も重要な基盤と考える。2024年度予算においては、自立支援相談事業等の国庫補助基準の見直しを行い、良質な人材の確保や支援の質を高める取り組みを評価する加算を新設し、相談支援員の処遇改善や経験年数が長い職員の評価を進めていく。また、事業委託に当たっては、事業運営の持続性や支援の質の確保が重要であるため、今後自治体に対し、委託先を選定する際の留意点や好事例等についてガイドラインの形で示すつもりである。

大椿ゆうこ/ 有期雇用の一番の問題は、首を切られるという不安に常に曝されていることだ。いつ自分が首切られるか分からない状況で働かされれば、人の支援など出来ない。このような状態を福祉現場が作り出してはいけないし、是非専門性を評価し、正規化を進めて頂きたい。

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