【報告・解説】4/18(木) 厚生労働委員会で質問!(セキュリティクリアランス)

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4月18日(木)は、厚生労働委員会で「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」(セキュリティクリアランス法案)に関する質問をしました。「身辺調査法」「経済版・拡大秘密保護法」たる本法案により、最も悪影響を被るのは労働者です。内閣官房提出・内閣委員会係属の法案ではありますが、4月4日に引き続き、この日も追及を重ねました。

なお、本法案の説明は、4月4日の審議を取り上げた記事の冒頭にまとめております。

質疑のハイライトをご紹介します(※発言は適宜要約・省略しています)。質疑全体は、参議院インターネット審議中継からご覧いただけます。

労働者を委縮させるな!

大椿ゆうこ/ 前回の審議で、内閣官房の参考人は、「従業員の適性評価は事業者が本人の同意を得て提出した名簿に記載された従業者に対し、その同意を改めて確認した上で適性評価を実施される」と回答された。事業者は、行政機関に名簿を出す前に適性評価の対象になる可能性がある労働者に対して、名簿提出に係る合意を取らなければならないということが、法文のどこに書かれているか?

政府参考人[内閣官房]/ 労働者が適性評価を受ける場合、一般的にはまず事業者が重要経済安保情報の取扱いを行う業務を行わせる従業者を選定し、これを名簿等の形で行政機関に申告するになる。ただ、名簿の提出は運用にわたる事項であり、その際に同意を取るということは法案の中には特段規定はされていない

大椿ゆうこ/ 合意を取らなくても良いのか?

政府参考人[内閣官房]/ 名簿提出後に適性評価が開始されると、直ちに調査を行う行政機関から調査についての告知と同意の確認が行われる。従って、事業者が本人の同意を取らずにその者の氏名を行政機関に伝えるということは考えにくい。

大椿ゆうこ/ 法案に書かれていないとのことだが、名簿提出時・調査開始時の2回、きちんと労働者の合意を取ることが重要で、労働者の個人情報はそれほど慎重に扱うべきだと指摘しておく。その上で、本当に労働者から真正な合意を取れるのか? 労働者は適正評価を受けることを実質的な業務命令として受け取り、適性評価を受けないと仕事を失うという思いに駆られ、不安・不本意ながら適性評価に応じることに追い込まれるのではないかと思う。その危険性をいかに回避するのか?

政府参考人[内閣官房]/ この点は非常に重要だと認識している。有識者会議の最終とりまとめの中でも、「本人の同意は、言うまでもなく、任意かつ真摯なものでなければならず、そのような真の同意を得るには、あらかじめ本人に対して、どのような調査が行われるのかを含め、同意の判断に必要な事項が知らされること、及び同意を拒否し又は取り下げても不当な取扱いが行われないことが担保されることが重要である」と指摘されている。我々も同様の認識である。

大椿ゆうこ/ 有識者会議のメンバーだった連合の代表者は、労使の十分な事前協議をすることや、適性評価の運用・対象業務に関する労使協定を結ぶことを強く求めたが、法文化には至らなかった。昨日の本会議では、立憲・社民会派の杉尾議員からこの件について質問を受けた高市大臣が、一律の義務付けは困難としながらも、義務付けまではできずとも運用基準の中で労働組合の関与を示せないか検討するという前向きな答弁をした。労働者及びその家族等に対してこれだけの身辺調査を行うのだから、労働者を代表する労働組合がこのことに関与するということが必要だと考えるが、参考人の見解は?

政府参考人[内閣官房]/ 高市大臣の答弁の通り、今後検討を進めたい。

大椿ゆうこ/ 7項目ある身辺調査の第一に掲げられているのが、「重要経済基盤毀損活動」との関係に関する事項である。当該行動の定義の後段部分には、「重要経済基盤に支障を生じさせるための活動であって、政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人を当該主義主張に従わせ、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で行われるもの」と書かれているが、具体的にはどのようなものを想定しているのか?。

政府参考人[内閣官房]/ 我が国にとって重要なインフラ及び重要物資のサプライチェーンに関して行われる、いわゆるスパイ活動やテロリズムに関するものを指す。具体的には、例えば、我が国のインフラの機能を妨害するサイバー攻撃や物理的破壊行為のように、重要インフラまたは重要物資のサプライチェーンを不当に阻害するような行為を想定している。

大椿ゆうこ/ 労働組合が行うストライキによって一時的に重要インフラが停止されることがあるが、こうした活動は重要経済基盤毀損活動に該当しないということで良いか?

政府参考人[内閣官房]/ 適法に行われるストライキ等の争議行為は、労働者に保障された正当な権利行使であり、これを不当なテロリズムと同視することは当然出来ない。重要経済基盤毀損活動には該当しないと考える。

大椿ゆうこ/ この質問をあえてしたのは、労働運動の歴史は国家権力からの弾圧との闘いでもあったと先輩方から聞いているからだ。重要経済基盤毀損活動との関わりに関する調査が、労働運動や様々な市民運動に参加している人たちの活動を抑制・萎縮させることにつながったり、要注意人物の洗い出しに使われたりすることを懸念し、この質問をした。憲法28条に保障されている労働三権はしっかりと保障されるべきものだとの参考人答弁だが、大臣も同じ考えか?

武見厚生労働大臣/ 適性評価において重要経済基盤毀損活動との関係に関する事項についての調査が行われ得るとしても、労働者の団結権・団体交渉権・団体行動権で構成される労働三権の保障が重要であるということについては変わりはないと考える。

大臣・参考人の双方から労働三権を保障することが重要であり、重要経済基盤毀損活動にストライキが該当しないとの言質を引き出したことは大切ですが、「適法に行われる」との条件を付けたことには注意が必要です。少なくとも法文上は、
①重要経済基盤に支障を生じさせるための活動であり、
②政治上その他の主義主張に基づき、
③[a]国家若しくは他人を当該主義主張に従わせる目的 または [b]社会に不安若しくは恐怖を与える目的 で行われた
と調査する側が主張すれば、何でも重要経済基盤毀損活動に該当すると言われてしまいます。
「その他の主義主張」「他人」という、あまりに曖昧な言葉が定義に組み込まれ、いくらでも拡大解釈可能です。司法による判断も介さないので、調査をする側が「重要経済基盤毀損活動に関わる」と一方的に主張さえすれば、関連情報をいくらでも調査できることになります。
ベトナム戦争中は、日本を米軍の攻撃に加担させないよう、軍事物資の運搬を妨害する大きな労働運動・市民運動が行われました。そのような運動が重要経済基盤毀損活動に該当するとみなされ、運動に参加する市民が軒並み調査対象にされることは十分考えられます。
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