シングル・非正規でも使える制度か?
育児休業について、今回政府は「共働き・共育て」を強くアピールしているが、それゆえにシングルで子どもを育てている方々への配慮が少ないような懸念を持っている。シングルマザーの中には、非正規労働者が多く、子育てをしながら二重三重の仕事をしている人もいる。こうした方々には、育児休業の期間を延長するなど特別な配慮が必要だと考えるが、厚労省の見解は?
政府参考人[厚労省]/ 一人で子育てをして、仕事にも尽力をされているシングルマザーの方々が雇用形態にかかわらず仕事と育児を両立できるようにしていくということは大変重要だと考えている。今回の改正では、子や家庭の様々な事情に対応できるよう、個別の意向の確認とその意向への配慮を事業主に義務付ける措置を講じたいと考えており、非正規雇用の方々も含めたシングルマザーの方々が制度を利用できるようにしたい。
大椿ゆうこ/ 非正規労働者は産休・育休が取れないと思っている人、そして、取れるとは知っていても、子どもができたと伝えたら次の契約はないかもしれないという不安を抱えている人が少なくないと思う。妊娠・出産、及び休業等取得を理由にして退職勧奨等のいわゆるマタニティーハラスメントを行ってはいけない旨、厚労大臣は改めて事業者に周知徹底すべきだと思うが、大臣の見解は?
武見厚生労働大臣/ 正規・非正規にかかわらず、妊娠・出産等、及び育児休業等に関するハラスメントを含め、働く方の尊厳や人格を傷つけ、職場環境を悪化させるハラスメントは許されない行為であると考えている。ハラスメント防止等に関しては、事業主に法の遵守を求めている。事業主が妊娠・出産、育児休業等の取得を理由にして解雇や退職勧奨等をした場合は、法で禁止している不利益取扱いに該当することとしている。
大椿ゆうこ/ 介護休業について、介護と仕事の両立を図るためには、介護サービスを受給できることが必須である。今般の介護報酬改定における訪問介護の基本報酬引下げは、多くの訪問介護事業者の経営を揺るがし、介護と仕事の両立に逆行するものであり、介護離職の可能性を更に高めるものではないかと考える。報酬引下げは介護と仕事の両立を掲げる政府の方針に矛盾すると思うが、大臣の考えは?
武見厚生労働大臣/ 今般の介護報酬改定において、訪問介護の基本報酬は見直すものの、処遇改善加算は他の介護サービスと比べて高い加算率を設定している。これによって訪問介護員の処遇改善を行い、人材の確保・定着を図っていくことが、訪問介護事業所の安定的な運営のためにも重要だと思う。住み慣れた地域でできる限り暮らしていただくため、在宅介護等のサービスを提供していくという方向性は変わらず、仕事と介護の両立を推進する方向性と矛盾するとは考えていない。
大椿ゆうこ/ 与党・野党かかわらず、自民党の議員の皆さんからもこの報酬引下げに疑問の声が上がっていたと思う。報酬を引き下げては現場がもたない。利用する家族の方々ももたない。大臣には現場の声をもう一度しっかり聞いて頂きたい。子の看護休暇及び介護休暇について、「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会(第7回)」において厚生労働省が提出した資料によると、子の看護休暇の利用状況は、男性社員が0.6日/年、女性正社員が1.1日/年、女性非正規社員が0.9日/年となっている。この利用状況も考慮に入れ、今般の法改正では子の看護休暇の付与日数(子ども1人なら5日/年、2人以上なら10日/年)を変更しないことに決めたということだが、休暇の取得が進まないのは、休暇が無給であること、代わりの人員が確保できないこと、職場に休暇を取得しづらい雰囲気があることなど様々な要因があると考えられる。現在の取得日数は、子の看護休暇のニーズを正しく反映しているといえるか?
政府参考人[厚労省]/ 子の世話のための休暇のニーズについては、子の看護休暇だけでなく、その他の休暇制度も含めて実際に費やした日数等を基に把握をすることが重要だと考えている。厚生労働省でアンケート調査をした結果、1年間に子供の病気のために利用した各種休暇制度などの状況は、子ども一人の場合、男性正社員は計1.8日、女性正社員は計4.2日、女性非正規社員の場合は計4.6日だったため、付与日数を変更しないことにした。
大椿ゆうこ/ 日本は男女の賃金格差が大きい。所得保障がないまま育児・介護のための休業・休暇を進めても、収入の減りを抑えるため、女性の方が休業し、男性は働き続けるという選択をする夫婦は少なくないと思う。そうなれば、「女性は家で家事・育児・介護という」性別役割分業をむしろ強めることに繋がると考えるが、厚労省の見解は?
政府参考人[厚労省]/ 男女の賃金差異の解消は非常に重要な課題で、様々な手法を進めている。ただ、看護休暇・介護休暇については、労働者が希望する日の取得を事業主は業務の都合等を理由に拒むことができない非常に強い権利になっているため、有給の原則化などの所得保障については慎重な検討が必要だと考えている。
大椿ゆうこ/ 有期雇用労働者の休業等の取得について、養育する子が1歳6か月に達する日まで労働契約が満了することが明らかである有期雇用労働者は育児休業の取得を申し出ることができる者から除外されている。この規定が残されていれば、育児休業を取得できない有期雇用労働者も少なくないと考えるが、何故この規定を残す必要があったのか? 1歳6か月は何に根拠をしているのか?
政府参考人[厚労省]/ 育児介護休業法制定時、有期雇用労働者は対象外となっていた。2016年の法改正で有期雇用労働者も適用対象にされたが、「子が1歳に達する日を超えて雇用継続させることが積極的に見込まれている」かつ「2歳までの間に契約が終了することが明らかでない」という要件がつけられた。それを緩和して現行の要件になっているが、その要件については、「休業により一定程度雇用の継続が図られる範囲の有期雇用労働者について対象にする」という考え方に基づいて設定している。
大椿ゆうこ/ 育児休業・介護休業等について、事業主が所得保障する義務は定められていません。休業期間中に所得保障を受けようと思うと、雇用保険法に基づく育児・介護休業給付金を受けることになるが、これらの給付金には「休業開始日前2年間のみなし被保険者期間が通算12か月以上」等の被保険者要件がある。有期労働者の中には受給要件を満たさない人も多いと考えられ、制度からこぼれ落ちると思うが、厚労省の見解は?
政府参考人[厚労省]/ 雇用保険における育児休業給付の受給要件は、雇用形態による違いはない。一方で、正社員と比較して有期雇用労働者の育児休業・介護休業の取得率が低いことは事実である。有期雇用労働者も希望に応じて育児休業等の取得が可能となるように、厚生労働省としては、有期雇用労働者も要件を満たせば育児休業等を取得できること、及び雇用保険の被保険者であれば育児休業給付等の対象となり得ることを周知徹底する。加えて、育児休業等を取得した労働者の代替要員を新規に雇い入れた場合等に支給される両立支援等助成金について、有期雇用労働者が休業取得する場合は加算措置を設けている。
短時間正社員制度 民間の取り組みを学べ!
大椿ゆうこ/ 非正規雇用であるが故に情報が阻害されるという問題が根本にあると思う。最後に、広島電鉄株式会社の取り組みを紹介したい。広電は2009年に契約社員の正規化を実現し、2017年には短時間正社員をはじめとする多様な働き方の制度を導入しました。短時間労働制の意義は、正規雇用の状態を維持しているというところだと思う。私たちはライフステージの中で、子育て・介護・自分の病気などにより、フルタイムで働くことが難しい時がある。広電の制度は、理由を問わず本人が希望する3か月以上の一定期間において短時間正社員に転換することができる、転換回数には制限を設けない、転換に際して職種の変更は原則行わない、労働時間は本人の希望を踏まえて個別に決定するというものである。私が非正規労働者として働いてきて一番嫌だったのは、賃金が安いことよりも、いつ首を切られるか分からないことだった。非正規雇用を入口規制によって減らし正規化することは前提だが、正規のまま短時間労働が出来るようにする民間の取り組みを政府も学ぶべきだと考えるが、大臣の見解は?
政府参考人[厚労省]/ 広島電鉄株式会社の事例はまさに好事例だと考えており、厚生労働省の多様な働き方実現応援サイトでも好事例として紹介している。厚生労働省としては、短時間正社員を始めとした多様な正社員制度は一人一人のライフスタイルに柔軟に対応できる働き方であり、優秀な人材の確保・定着の実現にも有効であると考えており、労働者が個々のニーズに応じた多様な働き方を実現できる環境整備に取り組んでいきたい。
大椿ゆうこ/ 「共働き・共育て」を実現する、女性たちに負荷が掛かっていた部分を男女共に担おうという部分は、決して否定するものではない。ただ、シングルの方々でも使いやすいかどうかを考えることが制度を作るうえで必要だとお伝えし、質問を終わる。



