【報告・解説】5/14(火) 厚生労働委員会で質問!(会計年度任用職員・共同親権)

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共同親権導入への懸念 厚労省は現場の声を聴け!

大椿ゆうこ/ 法務委員会で議論されている共同親権導入については、夫からDVを受け、何とか離婚が成立して子どもと共に安心した暮らしを手に入れた女性やそのお子さん、現在も係争中の方、そういった方々を支援してこられた行政の職員や民間の支援団体の方から、共同親権の問題点や不安なお気持ちを色々と聞かせて頂いた。DV被害者の支援に関しては、女性支援事業を担う厚生労働省も無関係ではないので、現場から上がる懸念の声に基づいて質問する。まず、今年4月1日から困難女性支援法が施行されが、この法律に基づく支援制度の整備と現状はどうなっているか?

政府参考人[厚労省]/ 困難女性支援法においては、各都道府県が基本計画を策定することとされており、この計画に基づいて施策に取り組むことになっている。各都道府県が定めた基本計画においては、例えば、困難な問題を抱える女性を早期に把握する観点からアウトリーチの実施やSNSの活用、あるいは相談体制の充実として市町村における女性相談支援員の配置の促進や資質の向上、あるいは女性相談支援センターの体制強化などに取り組む旨が盛り込まれている。女性支援における重要な担い手である女性相談支援員については、2023年4月1日現在、1595人の女性相談支援員が配置されており、そのうち非常勤職員は1315人(約82.4%)となっている。

大椿ゆうこ/ 会計年度任用職員の問題に通じるが、相談員の圧倒的多数が女性の非正規労働者だという実態である。困難女性支援法第9条3項2号には、女性相談支援センターが、困難な問題を抱える女性の緊急時における安全の確保及び一時保護を行うことを定めています。例えばある夫婦について、離婚は成立したものの夫のDVが認定されず、共同親権となったとする。夫からの暴力を恐れる母と子が女性支援センターに保護を求め、対するセンター側が緊急措置をとった場合、親権者たる自分の合意を取ることもなく子どもの居所を変更したことなどが親権(居所指定権)侵害に当たるとして、夫がセンターを訴える可能性がある。支援現場は萎縮し、緊急措置を躊躇するのではないかと懸念される。民法改定案においては、「子の利益のため急迫の事情があるとき」に該当すれば、子の居所の変更等を一方の親権者が単独で行うことができるとされているが、急迫の事情の有無が訴訟で争われ、それがないと判断された場合、センターが行った緊急時の措置まで不当なものとして扱われないかと現場は不安を抱いている。センターが相談を受けた時点における事態の緊急性を認めた場合、親権の単独行使が可能な急迫の事情の有無にかかわらず、困難女性支援法に基づいた緊急時の措置をとるべきだと考えるが、その認識で差し支えないか?

政府参考人[厚労省]/ 法務省より、DV被害を受けている場合には、今般の民法改正案に規定されている「子の利益のため急迫な事情があるとき」に該当する旨が示されており、その「急迫の事情」があると認められるのは暴力等の直後のみに限られないとの見解も示されている。このため、女性相談支援センターにおいては、DV被害者の立場に立って相談に応じ、その相談内容に基づき、保護が必要だと判断した場合には、子の利益のため急迫の事情があるときに該当するものとして躊躇うことなく必要な支援を行う必要があると考えている。厚生労働省においては、こうした考え方について、女性相談支援センター等の関係機関に対し周知を行い、引き続きDV被害者への支援が適切に行われるよう努めていく。

「センターが保護の必要性を認めたら躊躇なく保護すべき」旨の答弁をして下さったのは良いのですが、質問の意図としては、センターは民法改定案のいう「急迫の事情」の有無を気にすることなく、緊急だと判断すれば保護すべき、と明言して頂く事でした。今回の厚労省参考人答弁は、「子の利益のため急迫の事情があるとみなして保護する」という趣旨にも解されるので、センター側が「急迫の事情」の有無を気にしなければならないようにも思えます。本来は親権の在り方と関係ないはずの相談支援が、今般の民法改定の影響を受けるのかどうか、引き続き確認が必要だと思います。

大椿ゆうこ/ DV被害者の支援に携わっている方々からは先ほどのような不安の声が出ている。保護すべき緊急性のある女性や子どもは躊躇せず遍く保護したいというのが、支援に携わっている方々の思いだと思う。相談員の皆さんが安心して職務を全うできる環境を整えるために、大臣はどのようにするつもりか?

武見厚生労働大臣/ 相談内容から支援が必要と判断した場合には、躊躇うことなく一時保護等の必要な支援を提供していく必要があると考える。

大椿ゆうこ/ 現場の方々から上がる不安な声にどう応じるか、運用方法がきちんと定められていない中で民法改定案の採決だけ進められようとしていることが大きな問題だと思う。昨年9月1日、日本産科婦人科学会・日本法医学会・日本法医病理学会・日本小児科学会の4団体が連名で、齋藤健・前法務大臣に、家族法制の見直しに関する中間試案への要望を提出された。要望書は、民法改定の趣旨・理念は理解するとしながら、「両方の親権者の同意を得る必要があれば、生命・身体の保護に必要な医療を実施することが不可能あるいは遅延することを懸念」しているとし、「共同親権制度を導入するにあたっては、子どもの生命・身体を保護する重要な場面である医療の実情に関して適宜医療者の意見を聴取し、上記のような懸念にも対応できる仕組みを検討」するように求めている。宛先は法務大臣だが、共同親権導入は医療現場にも大きな混乱・負担をもたらすことが十分に考えられる。厚労大臣は、このような現場の声をどう受け止めているか?

武見厚生労働大臣/ 医療現場では適切な医療が提供される必要性がある。仮に民法改正法案が成立した場合には、ご指摘のような懸念が生じないように、制度趣旨の周知をしっかりと図っていくことが重要だと認識している。

共同親権導入を含む民法改定案は、5月17日に参議院本会議で可決・成立しました。社民党は採決時に退席し、反対の意思を示しました。民法改定は2年以内に施行されるとのことですが、親権の帰属をめぐって父母間の係争が増えることは明らかで、それに対応するだけの家庭裁判所の体制整備も十分になされていません。「#ちょっと待って共同親権 プロジェクト」が立ち上げた、共同親権導入を拙速に進めないよう求めるオンライン署名は、賛同者が24万人を超え、DV・虐待被害を受けた当事者の他、その支援者からも共同親権導入への強い不安の声が上がっています。共同親権が導入されれば、今以上にDV加害者からの訴訟提起等の圧力行為が増えるのは明らかで、被害者支援を行う人を「親権侵害」として攻撃する事案が多発することで被害者支援そのものが委縮させられるのでは、との懸念も出ています。親権の在り方と共同監護・面会交流・養育費の支払いがごちゃ混ぜに議論され、立法事実の確認も体制整備も満足になされないまま共同親権が導入されたことは、大問題なのではないでしょうか?
質問の様子はこちらの動画からご覧いただけます。

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