【報告・解説】4/23(火) 厚生労働委員会で質問!(雇用保険法改正案審議)

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制度から零れ落ちる労働者への対処は?

大椿ゆうこ/ 今回の法改正で新たな雇用保険の適用対象にされる、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の労働を担っている人の中には、学生が多いと思う。厚労省には、学生か社会人かではなく、週労働時間を基準に適用可否を決めることを検討して頂きたい。また、学生たちが学業そっちのけでアルバイトをする原因には、日本の学費や奨学金の高さがあることも改めてお伝えしたい。週所定労働時間が10時間以上20時間未満の労働者は、非正規・労働者の割合が非常に高いと考えられる。求職者給付基本手当の受給要件が「離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12月以上」のままであれば、保険料は納めていても受給資格を満たすことが出来ない労働者が多くなるのではないかという懸念がある。2007年の改定以前と同じく、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6月以上であれば一律に受給者資格を認めたら良いと思うが、厚労省の考えは?

政府参考人[厚労省]/ 失業給付の受給を目的とした安易な離職を防止する観点から、原則離職前2年間に被保険者期間が12か月以上であることを要件としている一方、倒産・解雇等で非自発的に離職した方については、「離職日前1年間に被保険者期間が6か月以上」と要件を緩和している。

雇用保険は、被保険者も受給要件も度々改定されてきました。短時間労働者の増加や週休二日制の導入に伴い、週所定労働時間要件の見直しや収入要件の撤廃が行われ、被保険者が拡大されました。一方「モラルハザード」の問題を強調して給付は厳格化され、2007年の法改正で受給要件が厳格化された他、給付率・給付日数も縮減されてきました。短時間・非正規労働者の中には、受給要件を満たすことが出来ない、満たしたとしても基本手当日額は失業前の賃金を基準にするため給付額が少なすぎる等の問題にぶつかる方も少なくないはずです。「保険料は取られても、給付によって救われない」ということがないような制度設計が必要ではないでしょうか。

大椿ゆうこ/ 多くの労働者は、本当に仕事を失い、必死の思いでハローワークに行く。「給付を目的とした安易な離職」のことを、声高に繰り返すのは適切か疑問に思う。週所定労働時間が10時間以上20時間未満の労働者は、2つ以上の仕事を掛け持ちしているケースが多いと思う。その場合、雇用保険を負担する「主たる事業所」を決めるとのことだが、雇用保険関係に入っていない方の職場から離職した場合は給付の対象にならないということか? 65歳の高年齢被保険者については、一つ一つの事業所での所定労働時間が週20時間未満であっても、複数の事業所での労働時間の合計が20時間以上であれば被保険者となれる「マルチジョブホルダー制度」がある。労働者が仕事の一部を失った状況においても失業手当の受給が可能になるという制度だが、これを高齢者だけでなく、今回適用拡大の対象とされる人たちにも広げていくという考えはないか?

政府参考人[厚労省]/ 労働政策審議会における議論の結果、現行の方式を維持した上で、施行後5年を目途にマルチジョブホルダー制度の実施状況の把握と検証を行い、複数の事業所で働く方への雇用保険の適用のあり方について引き続き検討することになった。

 

失業は「悪」なのか?

大椿ゆうこ/ 委員の皆さんに配った資料は、2019年、私が選挙に出るために職場を退職した後、失業手当の手続のために訪れたハローワーク大阪東で手渡された資料である。雇用保険の手続をして、「これでちょっとゆっくりできるよ」と言っている熊ちゃんが、ウサギのイーストちゃんに「何言ってんの、ガオオ」といって激怒りされている。このチラシは、失業期間の長期化はデメリットが多いと知らせている。私はこれを見て怖いと感じたが、大臣はどう感じるか?

武見厚生労働大臣/ 1ページ目だけ見たときは、ちょっといかがなものかなと思った。ただ、2ページ目には、失業期間長期化のデメリットや、早く再就職することのメリットが優しく書いてある。2ページ目のことを言いたいがために、一ページ目でびっくりさせるようにしたのかと、好意的に解釈した。

大椿ゆうこ/ 私はこれを見たときに、「失業していることは駄目」「早く仕事探せ」「失業給付をずっと受け続けるな」というメッセージを感じた。今回適用拡大になる労働者の多くは、短時間労働ゆえに給付額も少なく、そもそも十分な貯蓄もない状況にいると思う。そういった中で、せき立てられるように「早く仕事を見付けろ」と言われると、落ち着いて次の仕事を選べず、条件の悪い職場に就職してしまって逆効果だ。例えば、給付日数を大幅に引き上げる等、雇用保険に入っているメリットを短時間労働者でも感じられるようにしたら良いと思うが、厚労省の考えは?

政府参考人[厚労省]/ 基本手当の所定給付日数については、失業中の労働者の生活の安定と再就職の促進という雇用保険制度の目的に照らし、年齢・離職理由等による再就職の困難度も考慮して設定している。労働政策審議会での議論でも、基本手当受給者の再就職状況等に大きな変化が見られないこと等から、所定給付日数の改正は行わない旨の結論になった。

大椿ゆうこ/ 職場で傷つき、次の仕事を見付けることがとても難しい人もいる。だからこそ、ハローワークの窓口では焦らせず、丁寧に落ち着いて、本当に安定した雇用に繋げることに主眼を置いて労働者をサポートをして頂きたい。そのためには、現在は多くの非正規女性が担っているハローワーク職員の専門性をしっかりと評価し、正規化しなければならないということも指摘しておきたい。被保険者の拡大については、施行日が2028年10月1日となっている。何故そんなの時間が掛かるのか?

政府参考人[厚労省]/ 今回の法改正で、現在の被保険者の約1割に相当する約500万人が新たに被保険者になり、こうした労働者は規模の小さい企業も含めてあらゆる規模の企業に分布している。労働政策審議会の議論においても、中小企業を代表する委員を中心に保険料負担等を懸念する意見があり、短時間労働者に対する調査では、新たに適用対象となる労働者の約半数は雇用保険に加入したくないと答えている。適用拡大に際しては、全国の事業主・労働者から理解を頂くため、十分な周知期間を確保する必要がある。また、事業者にとっては雇用保険手続の事務負担が増えるため、一定の準備期間を設ける必要があり、システム改修も必要なので、施行日を2028年10月1日にした。

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