11月16日(木)厚生労働委員会での質疑

厚生労働委員会

労働委員会の救済命令履行義務


それでは、次の質問に移らせていただきます。労働委員会の救済制度が形骸化しているという問題について、本日はお尋ねさせていただきます。
労働委員会における不当労働行為救済制度は、憲法二十八条が定める労働基本権保障を担保する上で極めて重要な役割を持っています。不当労働行為救済制度の核心は使用者の不当労働行為で生じた団結権侵害の早期原状回復にありますが、労働委員会の審査、命令の運営の現状を見てみると、労働者や労働組合の期待を裏切る事例が少なくありません。
資料の十ページを御覧ください。
大阪のナニワ生コン事件では、大阪府の生コン製造販売業者であるナニワ生コン株式会社及び浪速建資産業が二〇一八年に労働者を懲戒解雇し、団交拒否を、団体交渉も拒否した件で、大阪府労働委員会が二〇二〇年九月付けで救済命令を出しました。一、二名の懲戒解雇の取消しと現職相当職への復帰、二、団体交渉応諾、三、ポストノーティス、つまり謝罪文の掲示ですね、というものでしたが、両社は命令を不服として再審査を申し立て、団交実施と初審命令履行をかたくなに拒否し続けてきています。
二名の労働者は、解雇から丸五年、解雇無効の初審命令を受けてからでも丸三年経過がしても、不利益が回復されない状態が現在も続いています。
資料九ページ、下線を引いているQ十五を御覧ください。これ、厚労省のホームページなんですね。
本来、都道府県労働委員会が不当労働行為を認定し、救済命令が発出された場合、その命令は命令書の交付の日から効力を生じ、使用者は遅滞なくその命令を履行しなければならない、とされています。
使用者が不服な点があれば中央労働委員会に対して再審査を申し立てることができますが、申立ては当該命令の効力を停止せず、停止せずです、再審査の結果、これを取り消し、又は変更したときにその限り効力を失う、とされています。また、裁判所への処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない、とされており、使用者が救済命令に不服があったとしても、まずは初審命令を履行する必要があると、厚生労働省のホームページに書かれています。
しかしながら、先ほど事例に挙げたナニワ生コン事件でも、不履行に対して罰則規定がないことを言い訳にして、大阪府労働委員会は放置し続けたままです。不当労働行為を行った使用者に命令を履行しろと再度働きかけることもありません。
大臣、大臣にお尋ねします。
労働委員会の命令というものは公定力があるのではないでしょうか。それを守らないというのは違法ではないでしょうか。お答えをお願いします。

○国務大臣(武見敬三君) 都道府県の労働委員会が出す救済命令でございますが、使用者は交付を受けたときから遅滞なく命令の内容を履行しなければならないとされておりますが、使用者が中央労働委員会に再審査を申し立てた場合や裁判所に取消し訴訟を提起した場合など、命令が確定する前の段階において罰則により履行を強制することは難しいと考えております。
一方で、不当労働行為の申立てのうち、和解も含めれば八割程度はこの都道府県の労働委員会の段階で終結をしております。しかし、こうした、それに該当しないケースというものもあるわけであります。
引き続き、労働委員会において、こうした課題についても適切な審査が行われ、円滑にその調整ができるように努力を継続していきたいと思います。

○大椿ゆうこ君 このような労働委員会命令の不履行というのは、私は、不当労働行為制度、不当労働行為審査制度の労働委員会の存在意義そのものの問題に関わるというふうに思っているんです。大臣、その辺り、どのように真剣に受け止めていらっしゃるでしょうか。

○国務大臣(武見敬三君) ただいま申し上げたとおり、実際にこの労働委員会での結果について、それを不服として中央の労働委員会に再審査を申し立てたり、さらには裁判所に取消し訴訟を起こしたというような場合については、命令が確定する前の段階において、罰則によりこの履行を強制するということは労働委員会の立場からは難しいと、こう考えているわけであります。

○大椿ゆうこ君 しかしながら、厚労省が作っているホームページに、「裁判所に取消訴訟を提起したとしても、初審命令の効力は停止しないため、使用者は初審命令を履行する必要があります。」というふうに書いてあることは、厚労省のホームページに書いてあることは念を押しておきます。
それでは、もう一つの事例を挙げます。資料十三ページを御覧ください。藤原生コン運送事件についてです。
大阪府の生コン運送事業者の藤原生コン運送株式会社による労働者五名の雇い止め、解雇及び団体交渉拒否について、大阪府労働委員会が二〇二〇年二月二十五日付けで、一、雇い止め、解雇の無効と就労回復、二、解雇期間中のバックペイ、三、団交応諾、四、ポストノーティスを命じました。これに対して、同社が中央労働委員会に再審査を申し立てたところ、再審査は二〇二一年十一月三十日に結審をし、中労委は、審査計画書において、命令交付時期を結審後六か月以内と定めていました。ところが、結審から丸二年を経過した現時点でも中労委命令は交付されていません。一体、中労委はこの二年間何をやっているんでしょうか。
ここでも、労働者五名の解雇という最も重い団結権侵害の不利益が丸五年の間回復されない状態が続き、中労委が使用者の不当労働行為のやり得、やり逃げに加担しているとも言える事態が起きています。つまり、結果として、所管である厚生労働省も不当労働行為に加担し、紛争を拡大、長期化させることに力を貸し、自らホームページにも書いてある審査計画、そういったものの価値を下げ、労働委員会命令の価値を自ら引き下げていると私は考えています。
厚労省が自ら立てた審査計画にも背く労働委員会の状況は速やかに改善する必要があると考えますが、大臣の見解をお尋ねするとともに、これ、やっぱりホームページに厚労省が書いているんですから、実効性のあるものにする必要があるのではないでしょうか。これからの具体策について、大臣、お答えください。

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