「戦争犠牲者追悼、平和を誓う8・15集会」
誓いの言葉
社民党副党首 大椿ゆうこです。社民党を代表し、誓いの言葉を述べさせていただきます。
戦争が終わって78年目の8月15日を迎えました。本日、ここ千鳥ヶ淵墓苑に眠る、戦争によって命を奪われた全ての皆さまに、心から哀悼の意を表します。また、遺骨となったその身体が、未だふるさとや家族のもとに帰ることも出来ず放置されている、戦争犠牲者の皆様、広島・長崎の原爆の犠牲者、全国で50万人以上と言われる空襲被害者の皆様に心から哀悼の意を表します。
忘れてはならないのは、日本は被害を受けた立場であると同時に、加害者でもあると言うことです。植民地支配によって犠牲となられたアジア・太平洋の皆様とご家族に心よりお詫び申し上げます。
今年7月に韓国を訪れた際、三菱工業名古屋航空機製作所で強制労働をさせられていた、元徴用工の梁錦徳(ヤン・グムドク)ハルモニとお会いしました。95歳のヤンハルモニは、「あの時は、韓国人はバカだ、バカだ、人間じゃないと言われていた」と、日本語で何度も繰り返し私に話すのです。戦争はこの社会の中にある差別構造を利用し、排外主義を強化し、人間の尊厳と命を奪うということを、ヤンハルモニは私に教えてくれました。彼女たちに強制労働を強いた日本企業や日本政府がすべきことは、被害当事者と直接会い、その苦しみの声を聞き、誠実な謝罪と補償を行い、二度とこのような過ちを犯さないと約束し、後世に伝えることではないでしょうか。加害の歴史に向き合わず、むしろ歴史を修正しようとする今の流れが、新たな戦争へと私たちを近づけています。
私ごとではありますが、私は8月14日に生を受けました。終戦記念日の前日です。毎年、自分の誕生日を迎える度に想いを馳せるのです。明日なれば終戦を迎えることも知らないまま、人々はその前日、どんな気持ちで、どんな風に過ごしていたんだろうと。78年前の、私の知らない誰かの人生を想像するのです。
昨日の朝日新聞には、1945年8月14~15日未明、B29爆撃機825機を含む計1千機以上が、日本各地を爆撃、太平洋戦争の空襲の中で最多の出撃機数だったと書かれていました。明日が来れば生き延びられたであろう命が、そこにどれだけあったでしょうか。
3年8ヶ月も続いた戦争の中で、終わりが来ることすら想像出来ない悲惨な状況で犠牲となった人々、終戦を迎えてもなお、戦争が終わったことを知らされず、戦場の中にいた沖縄の人々、そして戦地に取り残された若者たち。自分の誕生日を迎えるたびに、戦争によって犠牲となられた人々の、無念と怒りの気持ちを想像することから、その日は始まります。
最近、岡山に住む89歳の父が、私によくこう言うのです。
「戦争はなーんもええことがねんじゃけぇよぉ。勝っても負けても、両方にとってええことなんか、いっこもねんじゃけぇよぉ。日本には憲法9条があるんで。「戦争はせん」言うとるんじゃけぇ、戦争はできんのじゃ。守らなにゃおえん」
時に涙を流しながら、そう言うのです。彼が11歳だった1945年6月29日、岡山空襲が起きました。家は岡山市内から50キロ以上も離れた場所にありましたが、その日、家の庭先で見た遠くの空は、真っ赤に燃え盛っていたそうです。子どもだった父を安心させるためか、大人たちは「あれは花火だ」と教えたそうです。父はのちに、それが岡山空襲だったことを知ります。これまで、あまり自分の戦争体験を話すことがなかった彼が、よく話すようになったのは、今の政治に対する不安からではないでしょうか。
今政府は『台湾有事』をあおり、安保三文書を決定し、5年間で防衛費を43兆円に増やす「防衛財源確保法」を成立させ、沖縄・南西諸島に敵基地攻撃を可能とするミサイル基地を急ピッチで建設しています。
私はこの4月に国会議員になったばかりですが、国会に行って驚きました。「防衛財源確保法」について、本会議場で、「核共有」を検討すべきだと平気で主張する野党議員がいたのです。さらに驚いたのは、それに対して議場が騒然とすることもなく、怒号が飛び交うこともなかったことです。「あぁ、また言っている」とやり過ごすかのような議場の空気に、私は強い危機感を覚えました。核共有などと言う主張は、全力で否定しなければならないはずなのに、今の国会にはその勢いが感じられません。
広島出身の岸田首相は、片方で「核なき世界を」と言いながら、核兵器禁止条約には断固として批准せず、軍拡を推し進めています。この矛盾した行為を指摘せねばなりません。際限なき軍拡の行き着く先は核兵器です。軍拡を進めながら、「核兵器廃絶」など実現出来る訳がありません。「核抑止力」を口にする国会議員の多さに、時に私は言葉を失いそうになりますが、広島、長崎、あの地獄絵の沖縄戦の再来を、私たちは断じて許してはなりません。
ここに眠る皆さんの前で、このような残念な話をしなければならないことを、本当に申し訳なく思います。しかし、私たちは決して諦めません。戦争を絶対に許さず、平和を構築するための努力を続ける私たちを見守ってください。ここ千鳥ヶ淵墓苑にて、私たちはすべての戦争犠牲者に対して、日本国憲法を堅持し、平和な世界を創っていくことをお誓い申し上げます。その強い決意を申し上げ、社民党の誓いの言葉と致します。
2023年8月15日
社民党副党首 大椿ゆうこ