暑さの影響をうけた新潟の米の状況を視察に行きました。
とにかく暑かった、いや熱かった2023年の夏
今年の夏はとにかく熱かった!
「暑い!」を通り越して「熱い!」
日本中が沸騰する勢いの「熱さ」でした。
しかもそれが長期間に渡って続き、「もう、夏はええわ~。勘弁してぇ・・・」と思っていたら、最近になってようやく秋風が吹き過ごしやすくなってきましたね。山火事、洪水、全国、いや全世界で起きる災害の多さに、気候変動がこれまでよりもさらに一段高いレベルに達したのでないかと危機感を感じる夏でした。
暑さの影響は作物にも大きな被害をもたらしました。米どころ新潟では、「1等米比率 過去最低か 県産コシ(コシヒカリ)0%台推移のJAも」という見出しで9月15日付けの新潟日報に大きく報じられました。これを受け社民党新潟県連合から、農林水産委員の大椿ゆうこに「ぜひ新潟に視察に来てほしい」との連絡があり、9月27日、新潟市を訪れました。
今回の視察の案内役は、自ら「百姓」を名乗る堀井修さん。1970年に県庁に入庁後、長年、農業改良普及員として働いて来られた方です。来る総選挙では社民党・衆議院比例北陸信越ブロック予定候補者として名乗りを上げています。スローガンは「百姓の自信と信念を取り戻す」。です!熱い!イイネ!
白い長靴がとても似合っている百姓・堀井修さんと大椿ゆうこ
視察スタート!
最初にお伺いしたのは、農業に携わって50年以上のキャリアを持つ、農業生産法人・新潟農園(新潟市秋葉区)の平野栄治さんです。現在、65ヘクタールの農地でコシヒカリや新之助を中心に米作りをされています。
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平野さんのお話を聞く大椿ゆうこと堀井修さん
今年の状況をお伺いすると、「5000俵検査してコシヒカリ1等が0%、2等が60%、3等が29%、さらに規格外が11%。1等と2等の価格差は3000円にもなる。経常利益が出ない」と切実な訴え。
そして、「米価が下がっている中、年間200万〜300万円の収入で農業をしようと思うか?最低でも400万の収入がなくちゃ暮らせない。なぜ、農家への直接払いをしない?」「日本の農業には点滴が必要。点滴とは農家への直接払い、戸別補償制度。それで延命措置を取りながら、体質改善をしなきゃならん」と、担い手不足、耕作放棄地の増加の原因を厳しく批判しながら、具体先を示してくれました。
「農家にどうするんだ?と聞くのはやめてくれ。国民に問いかけて欲しい。消費者に問いかけてほしい。わしらはいい。食べていけるから。でも、あなたたちは米なくなったらどうするんですか?それでいいんですか?って聞いてくれ。国は、そういう世論づくりをして欲しい。」「米農家は、この国の食料を守っているんだから税金で守る。そういう訴え方をしてほしい」という平野さんの言葉がズシンと心に響きました。
9月29日の新潟日報一面「1等米わずか1.6%」
次に訪れたのは、新潟市南区にあるJA新潟かがやきです。常務理事の長澤義弘さんと、代表理事長の小野志乃武さんにお話を聞かせていただきました。
JA新潟かがやきにて常務理事の長澤義弘さんと代表理事長の小野志乃武さんとお話しする堀井修さんと大椿ゆうこ
米の状況を尋ねると、コシヒカリは1等が0.3%、2等な30%、3等が70%、規格外が0.6%という状況。暑さにより夜間の気温が下がらなかったことが影響し、白く濁った米が多かった。暑さに強い新之助は、ほとんど1等だったとのこと。
物価高騰の中、小規模農家が続けていくことの難しさについても触れ、「後継者不足、農地維持のためにも、農産物の価格保障、価格転嫁を考えてほしい。JAはどうするのか?と尋ねられるが、国はどうするのか?と逆に尋ねたい」との言葉が返ってきました。
国に対して何か要望はありますか?と尋ねると、「JAがライスセンター(収穫したお米の荷受けから乾燥、籾摺り、選別作業を経て管理・出荷までを行う施設)を作ってくれたら、米を作ってもいいと農家から言われる。ライスセンターを作るための補助金を出して欲しい」との具体的な要求をお聞きしました。
そして最後にお話をお聞きしたのは、有限会社長谷川商店 の長谷川尋紀さん と有限会社ファーミング・スタッフ の安野検一さん。
長谷川さんは、契約農家さんから米を買い取り、お客様の要望に合わせて産地・銘柄の選別、ブレンド、精米をし販売をされています。安野さんは、米や枝豆の栽培、米の卸・販売、切餅を製造しています。
2022年と2023年の玄米・米のはいった皿を囲んで説明を受ける
長谷川さんは、2022年と2023年の玄米・精米した米、それぞれを私の前に置き、違いを説明してくれました。2022年の玄米には、飴色の様な艶があるが、2023年のものにはそれがない。白米も比較すると良くわかる。今年の物は、粒が小さくて、薄く、手で触った感触も違う。とことんこだわり抜いて米を販売されて来られた方だからこそ、味の違いはさほどないと言われていても、この状態の米を売ることへの抵抗を、正直に私たちに語ってくれました。
安野さんは、国の農業政策を厳しく批判しながら、「農地を守るためのゾーニングが必要。なぜ土地を管理する必要があるのか国民が理解していかないといけない」「米価を上げないとダメ!」「化成肥料で作る農業しか知らない人が増えた。土壌学の勉強が必要だ」など、課題解決のための様々な提案を示してくれました。やはり現場にいる人から聞かない限り、本当に必要されているものは何か、わからないことが山ほどあります。
そしてここでも「食料自給率は38%。これは国民の問題。生活者の問題。海外依存で良いのか?食べることは生きるための基本。自分の問題として考え、責任を持つことが必要だ」と話してくれました。
この日訪れた3カ所全てで言われたことは、「米がなくなってもいいのか、国民に問いかけてほしい。国民に考えてほしい。国には、その世論を作ってほしい」というものでした。堀井さんは言います。「ストライキどころじゃないんだ。ストライキもせずに、みんな辞めていっている。米を作る人がいないんだ」。のんびりしている間はない、すでに状況は切実なのだと改めて実感しました。
農林水産委員会に配属になって数ヶ月。与野党がバチバチ対立し合う様な委員会ではなく、農業、林業、水産業、第一次産業をとりまく深刻さは互いに共有されているものの、その議論が、農林水産委員会の中にとどまっているように思えてなりません。食料自給率の低さ、担い手不足、耕作放棄の問題を国民的な議論に発展させること、これは農林水産委員の役割です。
新潟からの帰り、岡山の母からメールが届きました。(誤変換あり)
「ウチもお米出来たよ、今年出来悪いみたい、農機具やさんがいってた、
だんだん十分なことが出来なくなったから収穫は悪くなるよ、・平野とちがって草刈りやらなかなか大変だが、あらしてしまうと、みずのながれも変わるし地球保全の役目もあるからそんとくなし」
と書かれていました。私の実家は、米農家ではありませんが、自分たちが食べるだけの米はずっと作り続けてきました。しかし、作れば作っただけ赤字が出るのが今の状況。あと5年もすれば、高齢化と担い手不足で、一気に農業を止める人が増え、耕作放棄がさらに増えるだろうと言われています。大きな収益を上げる米農家ではないけれど、自分たちが食べるものは自分たちで確保する、生きるのびるスキルを持った小規模農家が淘汰されようとしているのが今の日本です。
農家に生まれ育った者として、引き続き、この問題に向き合っていきます。