2023年10月4日(水)大椿主催イベント「カタルーニャにとっての自己決定権とは~独立運動と国家によるデジタル監視~」

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10月4日(水)に参議院議員会館の中で講演会を企画しました。

バルセロナ大学教授で経済学者、現京都大学客員研究員のElisenda Paluzie(エリゼンダ・パルジエ)さんをお招きし、『カタルーニャにとっての自己決定権とは~独立運動と国会によるデジタル監視~』と題した講演会を参議院会館で開催しました。日本の国会の中で、このテーマでカタルーニャ人が講演をしたのは初めてのことではないでしょうか。


バルセロナ大学教授・経済学者、現京都大学客員研究員Elisenda Paluzie(エリゼンダ・パルジエ)さんと大椿ゆうこ

エリゼンダ・パルジエさんとの出会い

2019年、初めて挑戦した参議院選挙に落選した後、心身とも猛烈に疲れた私は、つれあいの故郷であるバルセロナに2ヶ月半滞在することにしました。「せっかく政治をめざしたんだから、カタルーニャの政治家や活動家に会ったらどうか?」とつれあいに言われ、彼のアレンジに乗っかって、様々な方に会う機会に恵まれました。そのひとりがElisenda Paluzieさんでした。当時、彼女はAssemblea Nacional Catalana(ANC/カタルーニャ国民会議)の代表をつとめており、カタルーニャがスペインからの独立を望むのはなぜか、どうやって何百万人単位のデモを組織化しているのかなどお話を聞くことができました。

2019年にAssemblea Nacional Catalana(ANC/カタルーニャ国民会議)を訪れた際の写真

1ヵ月ほど前、つれあいがSNSを通じてPaluzieさんが京都にいることを知り、せっかくのこの機会に、日本のみなさんに彼女の話を聞いてほしいと思った私は、急遽今回の講演を企画しました。急な告知にもかかわらず、当日会場に足を運んでくれたみなさん、ありがとうございます。


当日は50人ほどが参加しました。

講演はカタルーニャ語で

講演会は、カタルーニャ語から日本語に通訳する形で行われました。カタルーニャ語は、かつて「話すな」「使うな」と弾圧を受けた歴史を持つ少数言語です。冒頭、Paluzieさんは、「カタルーニャ語で、今日の講演ができることを嬉しく思う」と話されていたのが印象的でした。

スライドを見ながらわかりやすく講演してくださいました。

日本人の多くは、「カタルーニャ」がどの地域をさしているのか知らず、知っていたとしても「スペインの一部」として認識しています。かつての私もそうでした。よって、カタルーニャがどんな歴史を歩んできたかを詳しく知る人々は限られています。Paluzieさんには事前にそのことを伝えていたので、1701~1714年まで続いたスペイン継承戦争からひもときながら、カタルーニャの自治権が剥奪されたり、取り戻したり、自治憲章が改悪されたりしてきた歴史的・政治的な背景について説明してくれました。

2006年、カタルーニャで行われた住民投票によって、新しい自治憲章がカタルーニャ州議会で採択されましたが、その後、スペインの裁判所が大幅に修正。カタルーニャを『国会』とする第1条と、バスク州と同様の財政システムを定める章がスペインの裁判所によって削除されたのです。2010年の憲法裁判所では、行政機関と教育機関でのカタルーニャ語の優先を取り消し、自治憲章の大部分を中央集権的(スペイン的)に塗り替えてしまったのです。これを受け、民衆による独立運動が大幅に拡大していきます。Paluzieさんは、「もはや空撮するしかデモの全体像を写す方法なし」と思われるほど、すさまじい数の人々が結集したデモの写真を見せながら、独立に寄せる人々の思いを説明しました。

2017年10月1日に実施されたスペインからの独立を問う住民投票に関しては、当時の映像を見せながら、スペイン警察と治安警備隊による住民投票の弾圧により、92の投票所となる学校が閉鎖され、警察らの暴力的な行為によって1066人が負傷したと説明されました。私もバルセロナに滞在していたとき、警察のゴム弾が目に当たり失明した男性と話したことがあります。


暴力行為によって住民が弾圧される様子のYouTubeのスクリーンショット

※暴力行為が含まれる映像です。視聴される際にはご注意ください。

住民投票は投票率43%の内、賛成90%(204万人が投票/有権者550万人の38%)でした。その結果を受け、独立宣言をしたものの、スペイン上院、スペイン政府による自治権停止の実行、プチデモン州首相と議員4人(カタルーニャ州幹部)が亡命、住民投票を扇動したとして政治家や活動家が逮捕される事態が起きました。また、スペイン政府がスパイウエア・ペガサスを使って政治家や活動家らの機密情報を収集していたことも明らかになりました。
デジタルを問う 欧州からの報告

Paluzieさんは、現在のカタルーニャの独立運動の状況とスペイン政府の現状について語り、カタルーニャ人が自己決定権を主張する正当性について話されました。ぜひ、講演会を聞いてみたいと思う方は、アーカイブからご覧ください。

アーカイブはこちら

私は、カタルーニャの独立運動を通して、日本の問題をより考えるようになりました。県民投票で圧倒的な反対の民意を示しても基地建設が進められる沖縄。今まさに、沖縄県名護市辺野古の新基地建設の設計変更を玉城デニー県知事に代わって「承認」する「代執行」が行われるかもしれない自体に直面させられています。また補助金カットや高校無償化排除により、自分のルーツである言語や文化を学ぶ機会を妨げられる在日コリアンの子どもたちのことも。自分たちの地域の問題を自分たちで決める自己決定権を権力者たちが奪い、無関心な人々がさらにその横暴に力を与え、アイデンティティまで弾圧する状況は、この日本の中にもあるのではないかと考えるきっかけをくれたのがカタルーニャでした。


スペイン政府は、私たちの民主主義を殺したが、カタルーニャ人を黙らせることは決して出来ない。のフラッグの写真。
この写真を見る度に、いつも沖縄のことを思う

それを少しでもみなさんと共有できたらと思い企画した今回の講演会。不手際も多く申し訳ありませんでした。


最初から最後までご参加くださった石川大我参議院議員。ありがとうございます!

参加してくれた皆さん、駆けつけてくれた在日カタルーニャ人のみなさん、片付けを手伝ってくれた石川大我議員(立憲民主党)をはじめとするみなさん、配信してくださった方々、そして通訳を担ってくれた野口さん、本当にありがとうございました。

大阪での公演は10月7日!

大阪での講演は10月7日(土)開催です。ぜひお越しください。

【大阪】
10月7日(土)14時~
PLP会館5階大会議室
http://plp-kaikan.net/access/a_index.html
(最寄駅 JR天満橋 大阪メトロ 扇町駅)
資料代500円


本を持つ

※会場では出版社の方がこられ、書籍の販売も行いました。日本におけるカタルーニャ語の第一人者・田澤耕先生の「カタルーニャ語 小さなことば 僕の人生」と「僕たちのバルセロナ」。大阪会場でも販売予定です。

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