12月5日(火)厚生労働委員会での質疑

厚生労働委員会

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第212回臨時国会で厚生労働委員会に所属している大椿ゆうこ。
質疑の議事録です。(12/8未定稿)

厚生労働委員会での大椿ゆうこ議員の質疑


◎「いのちのとりで裁判」(11月30日名古屋高裁)について
◎「大麻取締法一部改正」
・なぜ抱き合わせ法案なのか?
・大麻草の種の一元化について
・医療用大麻の規制緩和について
・若年層の大麻使用者への支援について

◎「いのちのとりで裁判」(11月30日名古屋高裁)について

○大椿ゆうこ君 立憲・社民会派、社民党の大椿ゆうこです。
本日は、閣法の質疑に入る前に、十一月三十日、名古屋高裁で判決が出された、通称いのちのとりで裁判について大臣にお尋ねします。
厚労省は、二〇〇八年から一一年に物価が四・七八%下落したとする独自の指標を根拠に、指数を根拠に、二〇一三年に平均六・五%、最大一〇%の生活扶助基準の引下げを決め、三回に分けて実行をされました。この基準額の引下げは生活保護に違反するとして、あっ、生活保護法に違反するとして、全国二十九都道府県、千名を超える原告が違憲訴訟を提起しました。
名古屋高裁は、原告側の請求を退けた一審判決を取り消し、原告の請求どおり国に一人一万円の賠償命令を出しました。長谷川裁判官は、判決の中で、厚生労働大臣には少なくとも重大な過失があるとの国の賠償責任についても触れています。
武見大臣、この裁判も十年の歳月が流れ、その間、原告だった千人の方々も今八百八十人になり、多くの方がお亡くなりになりました。国は、原告の状況も鑑み、この判決を受け入れ早期解決を図るべきだと考えますが、武見大臣のお考えと、全国各地で行われているこの裁判への今後の対応について簡潔にお答えください。お願いします。

○国務大臣(武見敬三君) 平成二十五年から三年間掛けて実施した生活保護基準の改定に関して、十一月三十日に名古屋高裁で判決があったが、当時の生活保護基準の改定について適法であったと認められなかったものと承知しています。現在、判決内容の詳細を精査するとともに、関係省庁や被告自治体と協議をしておりまして、今後、適切に対応してまいりたいと考えております。
なお、厚生労働省といたしましては、今後とも自治体との連携を図りつつ、生活保護行政の適正な実施に努めてまいりたいと考えています。

○大椿ゆうこ君 判決を受けて武見大臣は、十二月一日、記者会見をなさいました。基準額の引下げは手順も含めて適切なものだったと発言し、特定地域の名前を挙げ、生活保護制度というものが極めて好ましくない形で悪用されているケースが多々ありとの発言がなされました。生活保護の悪用に関しては非常に少ないにもかかわらず、厚生労働大臣が殊更にこのことを言うことによって生活保護バッシングにつながる可能性があるんじゃないかなということを私は大変危惧しております。この点につきましては別の機会に改めて追及させていただきます。

◎「大麻取締法一部改正」について

そして、次の質問に移らさせていただきます。大麻取締法等の一部改正法案に関する質問に移ります。

なぜ抱き合わせ法案なのか?

今回の法案のポイントは、大麻草から製造された医薬品の解禁と使用罪の創設です。過日、参考人の丸山教授も指摘されていましたが、この法案は、医療のニーズへの対応と薬物乱用への対応という趣旨と目的が非常に異なる政策を抱き合わせにした法案です。その結果、医療大麻の解禁には賛成できるが、使用罪の創設には慎重であるべきだという二つの立場が対立し、判断を難しくさせてしまっているように思えてなりません。使用罪の創設に慎重であるべきだという意見が医療大麻の解禁には反対していると受け取られる懸念があります。
なぜこの二つの法改正を抱き合わせにする必要があったのか、それぞれ審議しようとはならなかったのはなぜか、その理由をお答えください。

○政府参考人(城克文君) お答え申し上げます。
大麻につきましては、従来は医療用途が想定をされておりませんでした。大麻に関する規制は、このため、繊維等の採取を目的とした農業者を主な対象としたものでございまして、医療用途のある麻薬について、医療従事者を主な対象とした麻薬及び向精神薬取締法とは別の法律で規制をされてきたところでございます。しかしながら、今回、大麻由来の医薬品についても治療に用いることが可能となるように、他の麻薬と同様に医師等による施用等を可能とする必要がございます。そして、このために、現行の大麻取締法ではなく麻薬及び向精神薬取締法に大麻を位置付けることで、同法に基づく流通規制の下でその製造や施用を可能とすることとしたものでございます。
また、この見直しによりまして麻薬としての施用の枠組みに大麻由来の医薬品など大麻が含まれることとなる中で、若年層を中心に大麻事犯が増加傾向にあり、早急に大麻の施用に対する対策を取るべきとの背景もございましたことから、大麻についても他の麻薬と同様に施用罪を適用することが適切と判断をしたものでございます。
このように、医薬品としての施用と麻薬としての施用罪の適用は表裏一体の関係にあることから、一つの改正法案として提出をいたしたものでございます。
なお、国際的な麻薬の条約、麻薬単一条約におきましても、大麻は麻薬に含まれているところでございます。

○大椿ゆうこ君 表裏一体というところに対しては同意しかねるところがありますけれども、使用罪の創設に当たり刑事司法の介入が行われるわけですから、ならば、なぜこの法案を法務委員会との合同審査にしなかったのか、その理由をお答えください。

○政府参考人(城克文君) 私の方でお答えする中身か分かりませんが、過去の大麻取締法の改正におきましては、麻薬及び向精神薬取締法と一括改正した際にやはり厚生労働省所管の委員会のみで審議をされているという、これ過去の事実関係でございますが、こういったものがございます。
一般に、法律に罰則を伴う禁止規定を設ける場合に、全て法務の関係と合同ということは取られていないと私は承知をいたしております。

○大椿ゆうこ君 新人議員ゆえ分からない点があったかと思って、今の質問が適切ではなかったかもしれませんが、そのような御意見が私のところに寄せられたということで、この質問をさせていただきました。
私自身は、地域で暮らす障害者の自立生活支援に携わってきた関係から、自分の目の前で難治性てんかんの方が倒れるという様子を目の当たりにしたこともあります。また、地元であります大阪市では、二〇一八年に、てんかん発作を起こした男性が運転する重機が十一歳の聴覚障害の女の子をはねて死亡させるという大変痛ましい事故が起きました。現在も御遺族は、障害があるゆえに逸失利益が低く見積もられた中、心を痛めながら裁判闘争されておられます。
このような事故が起きないためにも、難治性てんかんに効果があると言われる大麻由来の医薬品を治療に用いることができるようにすることは賛成の立場ですが、使用罪の創設には慎重であるべきであり、議論を尽くすためにもこの二つの法改正は抱き合わせにするべきではなかったのではないか、また、国会審議の進め方の中で、法務委員会と合同審査というような形でこのことをやっぱり徹底的に審議、議論する必要があったのではないかということを指摘して、次の質問に移ります。

大麻草の種の一元化について

十一月三十日の委員会では、大麻農家の大森さんに御意見をお聞きしました。今回の法案に対し、大麻農家が蚊帳の外に置かれているとの声も私のところに寄せられました。
農家という視点で考えたとき、種の問題が出てきます。今回の法改正では、大麻を麻薬と位置付けることに伴い、これまでの部位に対する規制から有害成分の規制へと変わります。大森さんが栽培されている「とちぎしろ」はTHCはほぼゼロであると発言されていましたが、「とちぎしろ」以外の種を使っている農家さんもいます。「とちぎしろ」以外の大麻の中にはTHCの成分が高いものもあります。
成分規制に伴って種の一元化が行われるのではないかという懸念がありますけれども、政府の御見解をお聞かせください。

○政府参考人(城克文君) 今回の改正法案におきましては、大麻草の製品の原材料として大麻草を栽培する第一種大麻草採取栽培者につきましては、有害成分THCが基準値以下の大麻草から採取した種子等を用いて栽培しなければならないことといたしております。
その際、大麻草の品種につきましては、政府が指定するものではなく、基準値を満たす大麻草から大麻栽培者が自身の目的に合ったものを選択するという形になります。また、現行の大麻栽培者につきましては、低THC、低い、THCの低い品種への切替えが必要となりますが、その際、一定の経過措置期間を設けることといたしております。
さらに、海外からの種子の輸入を許可するほか、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所では、農林水産省の支援も得ながら、国内における大麻草の品種や栽培状況を把握し、情報及び資源の基盤整備を行う調査を開始をいたしたところでございます。
こうした取組を通じまして、現行の大麻草栽培者が種子の切替えに困ることがないよう支援を行ってまいりたいと考えております。

○大椿ゆうこ君 大麻も、ほかの植物同様、その地域のその土地に適した種類があると思います。種の一元化や管理は、大麻の持つポテンシャルを限定してしまうこととともに、地域性とかブランド化による付加価値や多様性の低下にもつながる問題ではないかなというふうに思います。
また、何を作るかというのはやはり農家さんが決めていくことであり、国から命令をされたりするものではないというふうに思います。今の御発言の中で、経過措置をとりながら低THCの大麻に移行していくことを目指すということですが、どうか、引き続き全国の大麻農家さんの声をしっかりと聞きながら、協議しながら進めていっていただければというふうに思います。

医療用大麻の規制緩和について

次の質問です。
今回の法改正では、部位規制から成分規制になることが大きな変更点です。THCを有害成分として位置付け、THCの残留限度値を設けるとなっています。しかし、世界では、CBD製剤のみならず、THCを含む様々な医薬品が存在し、医療現場で使われています。
個人的なことになりますけれども、私の連れ合いはスペイン国籍のカタルーニャ人です。二〇〇一年にカタルーニャ州では医療大麻が合法化されています。緑内障の持病を持つ連れ合いは、眼圧を下げるために医師から大麻の使用を勧められた経験があります。
緑内障に効く医療大麻は、医療用大麻はTHCの含有量が高いものだとの指摘がありますが、今後THC成分の高い大麻に効果があることが分かった場合、どうするのでしょうか。日本の緑内障患者は全国で推定四百万人いると言われており、今回、難治性てんかんなどの治療薬が解禁されれば、緑内障やほかの病気にもというふうに波及されていくことが当然ながら想像されます。今後の医療大麻の規制緩和の在り方について教えてください。

○政府参考人(城克文君) 今回の改正法案におきましては、大麻草から製造された医薬品の施用等を禁止する規定を削除するとともに、麻薬及び向精神薬取締法における麻薬と位置付けることによりまして、従来では使用が禁止されていた大麻から製造された医薬品が我が国でも使用できるようになるものでございます。
現在、我が国ではエピディオレックスという難治性てんかんの治療薬の治験が進められておりまして、早ければ六年、令和六年後半にも医薬品としての承認の申請が行われるものと考えております。
また、海外では、エピディオレックス以外にも、大麻草由来のサティベックスや合成成分由来のマリノールといったTHC含有量が高い医薬品が承認をされておりまして、HIVの治療でありますとか多発性硬化症、がんの疼痛緩和等の治療薬の一つとして使用されておると承知をしております。
今回の改正によりまして、これらの医薬品につきましても、国内での医療ニーズがあれば日本でも開発、導入することが可能となると考えております。

○大椿ゆうこ君 回答ありがとうございました。
それでは、アメリカのバイデン大統領は、二〇二二年十月、大麻の単純所持で有罪判決を受けた六千五百人以上に恩赦を与えると発表し、我々の誤った大麻政策のせいで余りに多くの人たちの生活が暗転してきた、今こそ過ちを正すときだと表明しました。このような世界の動きに反して、日本はこれから使用罪の創設を進めようとしています。
大臣、率直に、バイデン大統領のこの決断をどのように捉えていらっしゃいますか。また、大臣は世界の動きと逆行する使用罪の創設がなぜ必要だと考えるのか、見解を簡潔にお答えください。

○国務大臣(武見敬三君) 米国では国民の約四〇%が生涯で大麻を経験しております。生涯経験率が一・四%という極めて低い我が国とは大麻の蔓延状況が大きく異なっております。
米国での大麻の合法化の動きは、大麻の蔓延状況の下での流通の管理の必要性や、逮捕、起訴され、有罪判決が行われる割合が人種によって異なるといった人種マイノリティーに関わる社会情勢なども影響しておりまして、大麻の安全性を背景としたものではないと承知しております。
このため、米国の状況を踏まえれば、薬物の生涯経験率が低い我が国と単純に比較することはできないと思います。で、大麻に対する規制の在り方も、それぞれの国の状況に応じて構築していくべきものと考えます。

○大椿ゆうこ君 先ほどどなたかの質問の中で、一次予防で日本は効果を上げているという御発言がありました。その結果、非常に生涯の使用率が非常に低いところに抑えられていると。ならば、なぜここで使用罪を設けなければいけないのか。その一次予防で随分抑えられているのだったらば、そこでそのような、まあ「ダメ。ゼッタイ。」が私はいいとは思わないですけれども、そのような対策で十分だったのではないかという懸念を持っているということをお伝えしたいと思います。

若年層の大麻使用者への支援について

最後の質問にさせていただきます。
十一月十日、衆議院の厚生労働委員会で参考人質疑が行われ、参考人の神奈川県立精神医療センターの副院長小林桜児先生は、司法というおせっかいが患者さんの回復に役立つと思いますと発言をされました。労働運動や市民運動を通じて、不当逮捕、不当判決の現場を数々見てきた私としては、刑事司法をそんなに全面的に信頼してよいのかという懸念を正直持っています。
先日、薬物依存症回復施設大阪ダルクのディレクターの倉田めばさんと一般社団法人回復支援代表理事加藤武士さんに直接お目にかかって、この法案をどう受け止めるのかということでお話をお伺いしてまいりました。
倉田さんは、長年にわたり、この間、本当に多くの方々の御相談に乗ってこられているわけですが、彼女が言うには、相談内容のほとんどは、大麻によって依存症になった、体を壊したなどの健康相談ではないとのことです。大麻を所持したことによって逮捕された、そのことが周囲に知られる結果となり、退学、解雇、社会的な地位を失った、家族や周囲の信頼関係を失い、人間関係がうまくいかなくなった、就職に就けない、お金がない、それらによって精神障害を抱えることになった、社会生活がうまく送れなくなったという相談がもうほぼ一〇〇%だと言われていました。
これ、医療現場にいる方から見ればまた違う反応があるかもしれませんけれども、支援に携わっている彼女の実体験は、ほぼ一〇〇%、こういう相談が寄せられているということです。むしろ、刑事司法の介入がより人を生きづらくさせている、生きづらさを招いているというのが彼女やそして加藤さんの見解でした。
今回の法案で使用罪創設に懸念を抱く理由は、その後の人権保護や支援対策が具体的に全く見えてこないところに私は懸念を抱いています。厚労省としては、大麻を使用した者に刑罰を科した先にどのような支援、回復につなげていくのか、どのようにお考えになっているか、お聞かせください。

○委員長(比嘉奈津美君) 時間が過ぎておりますので、お答えは簡潔にお願いします。

○政府参考人(城克文君) はい。
御指摘のとおり、薬物使用で検挙されたりしたことによりましてその後の社会復帰が困難となるような事態は避けなければならないというふうに私どもも考えております。
このため、厚生労働省としましては、今年八月に策定した第六次薬物乱用防止五か年戦略の下で関係省庁連携いたしまして、政府一丸となって大麻を含む薬物乱用者に対する回復支援の対応を推進し、薬物依存症の治療等を含めた再乱用防止や社会復帰支援策を充実させる必要があると考えております。
厚労省としましては、再乱用防止対策として、麻薬取締部において薬物事犯者に対して断薬プログラムの提供でありますとか地域の社会資源への橋渡し等の支援を行っておりますが、令和六年度予算を増額要求し、本事業を拡大していく予定でございます。再乱用防止や社会復帰支援をしっかりと充実させてまいりたいと考えております。

○大椿ゆうこ君 人権保護の視点を忘れず、支援策を具体的に考えていただくことを求めて、私の質問を終わります。

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