6月2日(月) 消費者問題に関する特別委員会で質問 斎藤知事問題更問い&配置転換への対応を!

国会活動(委員会議事録)

当事者を検討会に!

大椿ゆうこ/ 配置転換の本題について質問をしていく。先日の参考人質疑には、オリンパス事件の濱田正晴さんにご出席頂いたが、濱田さんは、本法案が裁判することを前提に作られているということ自体が問題だと指摘された。裁判になった時点で労働者は負けている。裁判に行ってしまうと、なかなか労働者にとっては勝ち目がないということだ。大臣は、労働者が不当な扱いを受け、裁判で闘うことの大変さをどの程度認識されているか?

伊東大臣/ 私も、先日の参考人質疑における濱田参考人のお話については報告を受け、ビデオでも見たところである。労働者が勤務先とトラブルになり、裁判で闘うことの負担は重いものであると認識している。特に、我が国においては、労働事件について、証拠収集等訴訟提起までの準備期間を踏まえると、不利益取扱いが行われてから一審判決までに二年程度掛かることが珍しくないと承知している。さらに、労働事件においては上訴率が高く、当事者の一方が控訴・上告した場合には判決が確定するまでに更に長い時間を要することになると聞いている。このような点を踏まえると、一般の労働者が勤務先事業者を相手として訴訟を行うことは、金銭的にも精神的にも大変な負担が掛かることだと考えている。

大椿ゆうこ/ 私は、有期雇用を理由に職場を雇い止め・解雇された経験がある。裁判ではなく労働委員会で闘ったが、結果が出るまでトータル3年9月掛かり、結局職場には戻れなかった。公益通報か否かにかかわらず、職場に対して異論の声を上げた者、職場の不適切な部分を指摘した労働者は、一旦不利益取扱いを受ければ元通りになることはほぼないと確信するほど、労働争議は難しいものだと思っている。濱田さんも、最高裁で(配置転換を無効とする勝訴)判決が出ても、職場に戻ることが出来なかった。もし非正規労働者が会社の不正を見つけ、公益通報なんてしたら、非正規労働者だからこそ簡単に職場から追い出されてしまう。本当に労働争議は、労力は掛かるが、勝てない。一旦首にした労働者は、会社は絶対に戻したくないからだ。私はそれを自分自身も経験し、色々な事例も見てきた。だから、裁判まで持っていかせないために何が出来るのかということを考えなければいけない

代表質問では、トナミ運輸事件で不当な配置転換を受けた串岡弘昭さんのお話をさせて頂いた。通報を理由とする配置転換は深刻で、絶対に禁止をしなければならないと思っている。もし公益通報者保護制度検討会に串岡さんや濱田さんのような当事者が入っていれば、配置転換の規制をもっと真剣に議論できたのではないかと思う。今後、法定指針を定めることになり、また次の法改定に際して検討会が開かれると思う。その際には、必ず当事者を委員に入れることを約束して頂きたい。

伊東大臣/ 必ず入れるというのが妥当かどうかは別として、法定指針策定時や検討会等が開かれる際には、具体的な対応は今後検討するものの、多くの方々の声を聞くことは重要だと思っている。また、衆議院による修正を受けた改正案の附則において、本改正の施行後3年を目途として、改正後の施行状況を勘案し、改正後の規定について検討を加えるとされている。私が思うには、特定の当事者お一人を入れるというより、その方の代弁をする方々をきちんと入れて話を聞く、或いはその検討会の中で当事者の方々をお呼びして話を聞くといったことが大事でないかと思う。

大椿ゆうこ/ 串岡さんや濱田さんは、凄まじい経験をされ、そこからある程度時間が経っていて、本法がどうあるべきか客観的にお話し出来る方々だと思う。こういった方を委員に入れることには何ら問題がないのではないかと思うし、大臣の口からもあったように、少なくともヒアリングはすべきだと思う。検討会第5回では、三菱UFJ銀行と日本製鉄からヒアリングを行っている。大企業なら個別の企業を呼べるが、被害を受けた個人だったら駄目というのは、基準がおかしいのではないか。本当に被害に遭った個人を呼び、どんなふうに職場で嫌な目に遭ってきたか、裁判を闘うのがどれだけ大変だったか、当事者から聞くのと、当事者の周辺にいる人から聞くのとは大違いだと思う。当事者から聞かないと、公益通報したことによって被害に遭った人たちの痛みは分からず、それが法の中に生きないと私は思っている。大臣は少なくともヒアリングをすることは重要と言って下さったので、是非実現をして頂きたい。

※裁判負担の部分の動画はこちら

通報を理由とする配置転換をどう防ぐ?

大椿ゆうこ/ 串第5回公益通報者保護制度検討会に日本弁護士連合会が提出した資料でも、通報後に受けた不利益取扱いの内容は、多い順に、事実上の嫌がらせ、配置転換、降格・昇格させないとなっている。大臣はこの調査結果をご存知か?

伊東大臣/ 私も報告を受けて承知している。(公益通報に関する相談について)たくさんの件数があるので、被害に遭った方々の話を聞くのは大事なことであるが、この方々を委員にすぐ入れろという話は少し別ではないかという気がしている。この辺りにはご理解を頂き、ヒアリングでご了解頂きたい

大椿ゆうこ/ 了解は出来ないが、検討して欲しい。当事者をやっぱり委員に入れ、次の検討をしようとまた考えて頂ければないので、今日結論を出さなくて良いと思う。

労働基準法104条2項、労働安全衛生法97条2項、最低賃金法34条2項は、法令違反について行政機関に申告を行った労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと罰則付きで定めている。この「その他不利益な取扱い」は、当然不利益な配置転換も含む不利益取扱い全般を指しているという解釈で間違いないか。厚労省は、不利益な配置転換についても罰則を設けることは不可能ではないと考えているということで良いか。

政府参考人[厚労省]/ ご指摘の(労働関係)法令において罰則が設けられているのは、労働者の申告権を保障し、法違反の申告を促進することにより、労働基準関係法令の実効性を確保するためである。また、禁止している不利益な取扱いについては、申告をしたことを理由として解雇・配置転換・降格・賃金引下げなど、他の労働者と比べて不利益な取扱いをすることをいうとされており、実際に配置転換が不利益取扱いに該当するかどうかは諸般の事情について総合的に比較考慮の上判断される。

大椿ゆうこ/ フランス・ドイツ・オーストラリアは、通報者に対する不利益取扱いを解雇・懲戒に限定せず、刑事罰もしくは行政罰を付けて禁止をしている(※主要先進国の制度比較はこちら)。各国の通報者に対する不利益取扱いの禁止に関する罰則規定を簡潔に紹介されたい。また、こうした国々の法制度を日本に取り入れられないのは何故か。

政府参考人[消費者庁]/ フランス・ドイツ・オーストラリアにおいては、解雇・降格・雇用条件における差別・嫌がらせ等様々な取扱いを不利益な取扱いとして禁止しており、この点は日本の制度と大きく変わるものではない。罰則については、フランスは法文上保護される通報を理由とする不利益な取扱いのうち、雇用の拒否・懲罰・解雇等が罰則の対象となっている。ドイツ及びオーストラリアでは、保護される通報を理由とする不利益な取扱いは行政罰または刑事罰の対象となっている。法制度の成り立ちは国によって様々であるが、我が国においては、犯罪の構成要件は明確で、また対象となる行為は罰則に値するものでなければならないとされている。解雇や懲戒以外の不利益な取扱いについては、その態様が様々であり、不利益の有無や程度は個人の主観や事情に依存する部分が大きく、不利益であることが客観的に明確ではないため、罰則の対象とすることは困難ではないかと考えている。

大椿ゆうこ/ そこも次の課題になるのだろうかと思うが、やはり検討すべきところだと思う。人事に関する資料は事業者側が圧倒的に持っている。不利益取扱いを受けた労働者が、それが公益通報を理由にしたものだと立証するのは本当に困難だ。例えば、指定難病の治療薬を取り扱う製薬企業「アレクシオンファーマ」が適応外の患者にも使用するよう促す不適切なプロモーション活動を行っていることを内部通報し、閑職に追いやられた小林まるさんは、配置転換の無効を訴え訴訟を提起したが、東京地裁は、内部通報に対する報復だと認めるに足りる証拠はないとして彼女の訴えを退けた。第7回公益通報者保護制度検討会では、委員の志水芙美代弁護士が、「現在、定期的に配置転換を実施している事業者においても、適材適所に関して一定の定型的手法に基づいて一応の検討や記録化はしているのではないかと思われます。その中でも特に労働者にとって不利益性を相当程度に感じるであろう異動や人事評価の場合や、やや異例と思われるような異動のケースの場合は労働者から質問があることも考えられます。そのような際に説明できるように、一定の納得が得られるように通常より丁寧な検討・記録化をするなどのある程度の準備は既にしているのではないかと思います。従って、法改正によって事業者の対応が大きく変わる、あるいは無理を強いるといったことにはならず、むしろ通報者保護を優先させるべきではないかと考えています」と発言されている。やはり不利益な配置転換についても立証責任を事業者側に転換し、公益通報を理由に不利益な配置転換を行った訳ではないと立証できない事業者に対しては刑事罰を導入することも含めて検討すべきではないか。

政府参考人[消費者庁]/ 一般論として、経済活動の過度な萎縮を防止する観点から、犯罪の構成要件は明確で、また対象となる行為は罰則に値するものでなければならないと考えている。我が国では、メンバーシップ型雇用が一般的で、配置転換については、適材適所の配置や人材育成等の観点から、事業者の広い裁量の下、頻繁に行われており、必ずしも不利益な取扱いとは言えないと認識している。また、配置転換の不利益性は個人の主観や事情に依存する部分が大きく、罰則の対象とすることは困難であると考えている。

加えて、民事訴訟においては、自己に有利な法律効果の発生要件となる事実について立証責任を負うことが原則とされており、立証責任の転換はその例外を設けるものである。我が国では、事業者の広い裁量の下、人事異動が頻繁に行われており、公益通報とは無関係に、業務上の必要性から配置転換が行われることも多いと認識をしている。こうした中、公益通報者に対して配置転換が行われた場合には、公益通報を理由とするものと推定する規定を設け、事業者に立証責任を転換することは適切ではないのではないかと考えている。

一方で、現行法においても、配置転換や嫌がらせを含め、通報を理由とした不利益取扱いは禁止されており、消費者庁としても、こうした行為はあってはならないと考えている。消費者庁では、法定指針を改正し、不利益な配置転換や嫌がらせが禁止される行為に含まれ得ることを明示し、これを事業者に周知徹底することを予定している。こうした措置により、公益通報を理由とする不利益取扱いの違法性の高さが事業者に十分に認識され、民事裁判で参照されることなどにより、配置転換や嫌がらせも含めた不利益取扱いの抑止が期待されると考えている。

大椿ゆうこ/ 今回この審議をしている中で一番残っている課題は配置転換だと思う。多くの場合、事業者は配置転換をし、本人が辞めるというような状況に追い込み、自ら「辞める」の一言を言わせる。ここにどう歯止めを掛けるのかという点が、今回の法改定では不十分だという指摘を濱田さんはされているし、私自身も次なる課題だと強く感じている。

公益通報を行う当事者の多くは労働者だ。通報を行った労働者に対する不利益取扱いは、まさに労働問題そのものだ。私は、この問題を今後も消費者庁だけで行うことには限界があると思っている。厚労省も消費者庁と連携し、不利益取扱いの防止に取り組むべきではないか。また、今後行われる法定指針の作成や法改定において、厚労省と消費者庁、また他に適切な官庁があれば連携して行うべきと考えるが、厚労省はどのような見解か。

政府参考人[厚労省]/ 公益通報を行った労働者に対する不利益取扱いについては、労使間で生ずるトラブルであるという側面があるので、ご指摘のとおり労働問題でもあると認識している。労働基準監督署においては、労働者から公益通報があった場合、それが労働基準法等の違反に関係するものであれば、監督署が事実確認を行い、法違反の是正を指導している。また、所管の法令以外の法令について公益通報があった場合には、関係省庁に案内することとしている。厚生労働省としては、引き続き、関係機関と連携して労働者の不利益取扱いの防止に取り組んでいきたい。

※配置転換部分の動画はこちら

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