5月14日(水) 参議院本会議に登壇! 公益通報者保護法改定案について、会派代表質問

国会活動(委員会議事録)

伊東良孝・内閣府特命担当大臣答弁

(公益通報者保護制度検討会の人選)

制度をめぐる近年の国内外の動向を踏まえ、法学的見地や実務の観点から、制度の実効性向上に向けた課題と対応を検討するため、学界・労働団体・消費者団体・経済界といった各界の代表者や有識者を委員とした。検討に当たっては、通報を理由とする不利益な取扱いが争点となった近年の裁判例を参照したほか、通報者を支援している日弁連の消費者問題対策委員会の委員からも意見を聴取しており、事業者内部や行政機関、報道機関等の外部に通報した労働者の状況を十分に踏まえた議論が行われたと考えている。

高額療養費の自己負担限度額の引き上げを巡っても、制度を利用する患者当事者の意見を決めずに引き上げを決めたことが大きく非難されました。質問で紹介した串岡さん濱田さんのように、通報を理由にした酷い配置転換を経験した方の声を聴いていれば、より労働者の保護に資する法改定になったのではないでしょうか。今後も、改定に伴う法定指針の作成や、次の法改定に際し、検討会が開かれるはずです。その際は絶対当事者を入れるべきです。

(兵庫県文書問題)

一般論として、2号/3号通報を行った公益通報者も、保護要件を満たせば解雇等の不利益な取扱いから保護される。また、事業者がとるべき措置の内容を定めた法定指針における公益通報者には、2号/3号通報をした者も含まれる法定指針が定める体制の整備には、通報者の探索を防ぐための措置が含まれている

今回の法改正により、公益通報を理由として解雇または懲戒を行った事業者に対する刑事罰を導入し、正当な理由なく公益通報者を探索する行為を禁止する規定等を設けることとしている。これらの措置により、制度の実効性が向上し、事業者の自浄機能発揮につながると考えている。

大臣は斎藤知事の主張をはっきりと否定し、その答弁は朝日新聞にも取り上げられました。
(行政機関の除外規定)

国や地方公共団体の行政機関といった、自ら法令遵守を図り、義務を履行することが期待される事業者の体制整備については、その責任は常に国民や住民に対して直接負っていることを踏まえ、消費者庁の行政措置は適用しないこととしている。一方で、消費者庁では、地方公共団体向けの通報対応に関するガイドラインの策定や行政機関に対する実態調査の実施等を通じて、地方公共団体の体制の整備を促してきた。引き続き、このような取組を適切に実施していく。

地方自治・地方分権の原則に基づけば、国が地方公共団体の事務について介入を行うことは、なるだけ抑制されるのが望ましいと言えます。しかしながら、それは地方公共団体側が、自ら法令を遵守し、誤りを指摘されれば適切に対応を改めることが前提。国の有権解釈を完全に無視し、法令の趣旨に反する首長が増えれば、地方自治の前提そのものが崩されてしまうのではないでしょうか。

(森友学園問題関係―通報対象となる法律の指定の在り方)

公益通報者保護法は、食品偽装やリコール隠しなど、国民生活の安全・安心を損なう企業不祥事を端緒として制定された。このため、消費者保護という観点に重点を置き、国民の生命・身体・財産その他の利益の保護を直接の目的とする法律を対象法律としている。消費者庁としては、現在の法目的の範囲内で見られる制度の課題に対処することで制度の充実強化を図ることが重要と考えており、対象法律に公文書管理法等の国家の機能に関する法律を追加することは困難である。

現状では、通報対象となる505本の法律が別表で定められており、それらの法律において犯罪行為若しくは過料対象行為又は最終的に刑罰若しくは過料につながる法令違反行為とされるもののみが通報対象事実となります。そのため、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントについても、労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法において犯罪行為若しくは過料対象行為又は最終的に刑罰若しくは過料につながる法令違反行為とされていないため、暴行・脅迫・強制わいせつ等の刑法上の犯罪行為に該当しない限り、通報対象事実になりません。公益通報者保護制度検討会においては、別表に列記されていないものの、国民利益の保護の観点から重要な規定が存在するとして、対象から除外する法律を限定列挙するネガティヴリスト方式にすることも提案されました。民間企業では、公益通報受付窓口と、ハラスメント相談窓口が一体化している例も少なくないので、対象法律の指定の在り方にも再考の余地があるはずです。

(公益通報者の範囲の拡大)

今回の法改定では、働き方の多様化を踏まえ、事業者と業務委託関係にあるフリーランスを保護対象として追加した。取引先事業者は、個人でないため、保護の対象としていない。また、ボランティア、インターン等を保護対象とすることについては、これらの者に対する不利益な取扱いの実態が現状明らかではないため、その状況を注視していく。

(体制整備義務)

従事者指定義務以外の体制整備義務については、法定指針において様々な措置を求めているが、消費者庁の命令権や命令違反時の刑事罰の対象とすることは企業活動に対する公権力の過剰介入となるおそれがあり、困難と考えている。

消費者庁の実態調査の結果、常時使用する労働者の数が300人超の義務対象の事業者であっても、体制整備の不徹底と実効性の課題が明らかとなった。まずは義務対象の事業者において、体制整備の徹底と実効性の向上を図ることが重要である。常時使用する労働者数が300人以下の、努力義務の対象事業者には、内部通報制度の重要性や必要性について一層の周知啓発を行うとともに、これらの事業者の実情を踏まえ、導入を支援していきたい(※つまり、あくまで自主的な措置を支援するのみで、義務付けまではしない)。

(通報を理由にした配置転換の禁止)

労働基準法等は労働についての最低基準を規定しており、これらの義務の違反は直罰で担保されている。違反行為の重大性と、監督機関に対する申告という限定的な場面であることを踏まえ、不利益な取扱いの範囲を限定せずに罰則を規定している。

他方、公益通報者保護法では様々な通報先があり、対象法律も約500本あり、間接罰の対象となる違反行為も含むなど通報対象事実の範囲も広くなっている。こうした中、本法律において不利益な取扱いの範囲を限定せずに罰則を規定した場合には、萎縮効果が極めて大きく、人事の停滞等のおそれがあると考えている。また、他の労働法制やその実務との平仄を踏まえると、解雇・懲戒以外の不利益な取扱いについて、立証責任を事業者に転換することは適当ではないと考えている。

労働基準法をはじめ、労働安全衛生法・最低賃金法といった労働法では、法令違反について労働基準監督署に申告を行った者に対して不利益取り扱いを行うことは、その類型を問わず(解雇・懲戒の他、配置転換・降格・退職金の減額等、類型を問わない)罰則付きで禁止されています。そのことは担当大臣も認めているので、公益通報者についても、類型を問わず不利益取り扱い全般を罰則付きで禁止することは、不可能ではないはずです。実際、イギリス・フランス・ドイツ・オーストラリアは、通報者に対する不利益取り扱いを、解雇・懲戒に限定せず禁止しています。公益通報者保護制度検討会第5回で日本弁護士連合会が提出した資料でも、通報後に受けた不利益取り扱いの内容は、多い順に「事実上の嫌がらせ」「配置転換」「降格・昇格させない」となっていますから、罰則付きで禁止する対象を解雇・懲戒に絞るのは、余りに狭すぎて、通報者の保護のためには不十分と考えられます。

(労働組合・市民団体の活動の意義)

労働組合や市民団体は3号通報(※外部通報)先に該当する場合がある。公益通報者保護制度が実効的に機能するためには、事業者や行政機関のみならず、3号通報先の対象となり得る者が制度の意義を十分に理解し、公益通報に適切に対応することが重要と考えている。

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