無罪判決続出 警察は猛省を!
大椿ゆうこ/ 戦後最大の労働組合弾圧事件と言われる関西生コン弾圧事件について質問する。全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(以下、関生支部)については、2018年8月から2019年11月にかけて、労働組合活動を理由に18回・延べ81人もの組合員が逮捕され、延べ66人が起訴された。捜査に当たったのは、滋賀・京都・大阪・和歌山の4府県の警察だが、警察庁は一連の事件についてご存知か?
政府参考人[警察庁]/ 2013年から2018年にかけて、関生支部の組合員等から建設工事に関連した嫌がらせや金品要求を受けたとの告訴や被害申告が多数の企業等からなされたことを受けて、関係府県警察において所要の捜査を進め、2018年7月以降、組合員ら57人(延べ89人)を逮捕し、このうち41人(延べ80人)が起訴されたと承知している。
大椿ゆうこ/ 多少の数のずれはあるが、この事件については警察庁も認識されている。関西生コン事件については、日本労働法学会の労働法学者有志78人が2019年12月に抗議声明「組合活動に対する信じがたい刑事弾圧を見過ごすことはできない」を公表して記者会見を開いた。声明は、現在の警察や検察は、組合活動としての正当性の有無を具体的に検証していない、こんなことがまかり通るようでは、憲法28条の労働基本権保障や労働組合法による組合活動保障も絵に描いた餅になってしまうと批判している。警察庁はこの声明を読んでいるか。
政府参考人[警察庁]/ ご指摘の声明については承知しているが、その一点一点についてはコメントしない。警察としては、違法行為について法と証拠に基づいた捜査を行うことが重要なので、様々な法令に基づいてしっかりと捜査をしていきたい。
大椿ゆうこ/ この声明を読んで、自分たちがやってきたことに正当性があったと思うのか?
政府参考人[警察庁]/ 警察が捜査を行うに当たって労働基本権に配慮すべきことは当然である一方、個別事案に即して法と証拠に基づき適切に捜査を行っていきたい。
大椿ゆうこ/ 関西生コンの刑事裁判では、ここ3年ほどのうちに無罪判決が次々出されている。

2023年3月、和歌山広域協組事件(図中5)で組合員三人の逆転無罪判決が出され、この無罪判決は確定した。同年7月、タイヨー生コン事件(図中6-⑤、会館建設のためにカンパを受け取ったことが恐喝だとでっち上げられた事件)で前委員長の無罪判決が確定した。2024年2月、ビラまき活動が威力業務妨害や恐喝未遂とされた滋賀県の事件(図中7)で7人の無罪判決が確定した。今年2月、恐喝・恐喝未遂など、公訴事実4件の京都事件で、現在の委員長と前委員長の2人に完全無罪判決が出された(※この事件については3月13日の厚労委で取り上げた)。また、直近では4月17日、子どもの保育所に必要な就労証明書を会社に執拗に求めたという当たり前のことが強要未遂に問われた京都の加茂生コン事件(図中4)で、組合員1人に対して無罪判決が出された。検察が控訴しているものを除いても、既に3件延べ11人の無罪が確定している。この事実に間違いはないか。
日本の有罪率は99.9%とも言われている。ところが、関西生コン弾圧事件では既に3件11人の無罪が確定し、今年も2件新たな無罪判決が出ている。これだけ無罪が相次いでいるということは、一連の刑事訴追が完全に誤っていたことを示していると、私自身は受け止めている。これは深刻な事態だと考えるが、警察庁はどのような受け止めか?
政府参考人[警察庁]/ 未だ公判中の事件はあるが、一部の被告人について、故意や共犯性が認定できない等の理由によって無罪が確定したものもあると承知している。その点については、警察としても真摯に受け止める必要があると考えている。
大椿ゆうこ/ これだけ無罪判決が相次いでいるのだから、捜査のどこに問題があったのか、警察組織として検証する必要があると考える。
警察官への労働法教育が足りない!
大椿ゆうこ/ 和歌山事件について質問する。この事件は、和歌山広域協組という生コン業者団体の代表者が、元暴力団員を使って、関生支部の組合事務所周辺などを何度も徘回させていたことが発端だ。黒塗りのBMWに乗った元暴力団員ら2人が、組合員の乗用車のナンバーを撮影しており、組合員が見付けて何をしているのかと問いただしたところ、元暴力団員らは組合員の名前を上げて、「~~おるか、在籍確認や」と返答した。最寄りの警察署からパトカーが来たので、その場は収まったものの、関生支部は当時対立関係にあった和歌山広域協組の代表者が組合活動を威嚇するため差し向けたに違いないと判断し、アポを取った上で和歌山広域協組に出かけ、代表者に事実確認し、釈明と謝罪を求めた。また、宣伝カーで抗議宣伝も行った。このことが強要未遂・威力業務妨害だとして、組合員3人が逮捕された。事件の概要は大筋このようなもので間違いないか。
政府参考人[警察庁]/ この事件については、関生支部組合員らが、2017年8月、大阪市内の支部事務所周辺に元暴力団員らが来ていたことを奇貨とし、和歌山県広域生コンクリート協同組合の代表理事を脅迫するなどして、元暴力団員らを差し向けたなどと認めさせて謝罪させようと考え、組合事務所において出入口のドアを激しくたたき、代表理事をどなりつけるとともに、代表理事を誹謗中傷する演説を大音量で繰り返し、長時間にわたり業務の遂行を不能にするとともに、要求に応じなければ危害を加える旨告知して脅迫し、義務のないことを行わせようとしたとして、和歌山県警が威力業務妨害・強要未遂罪で組合員らを逮捕した事案と承知している。
大椿ゆうこ/ この事件は、関生支部に元暴力団員を差し向けた和歌山広域協組が被害者を演じたというおかしな事件である。しかし、一審の和歌山地裁は、なぜか組合員らに有罪判決を下した。ところが、大阪高裁は一転して無罪判決を出した。無罪判決の要旨は、元暴力団員らを差し向けた行為が関生支部の団結権を大きく脅かすことは明らかであり、それにもかかわらず一審判決は事実関係の一部を切り取った不合理な事実認定に基づき判断を誤っていると批判している。そして、組合員らの行動は団結権を守るための正当な組合活動であるとし、無罪を言い渡した。真っ当な判決だ。私も、雇い止め・解雇された関西学院大学の門前で、解雇された翌日に就労闘争として抗議宣伝をしたことがあるが、現在に至るまで逮捕されたことはない。このような正当な労働組合活動が犯罪として扱われるような社会に、いつからなったのか。一体どこで有罪と無罪の判断が分かれたのか。それは、産業別労働組合を理解していたかどうかという点にある。
一審は、和歌山広域協組では、関生支部の組合員は雇用されていないため、抗議活動に出かけることは社会的相当性がない違法なものだと判断した。対して大阪高裁は、一審判決は、憲法28条の労働基本権保障の趣旨や、関生支部が産業別労働組合であることを正しく理解しない不合理な判断と言わざるを得ないと厳しく批判し、無罪を言い渡した。
日本の労働組合は企業内組合が大半だが、企業横断的に組織されている産業別労働組合も存在する。その会社に組合員が雇用されているか否かにかかわらず、業界の企業や業者団体と交渉して産業団体の労働条件の引上げを図ることを目的としているのが産業別労働組合だ。海員組合や全港湾も、関生支部と同じ産業別労働組合である。厚生労働省に聞くが、産業別労働組合であっても、憲法28条・労働組合法の保護は及ぶという認識か?
政府参考人[厚労省]/ 労働者の団結権・団体交渉権・団体行動権のいわゆる労働三権は、憲法28条及び労働組合法等の関係法令により保障されている。産業別労働組合についても、労働者が主体となって組織された労働組合であれば、憲法28条や労働組合法の保障は及ぶと考える。
大椿ゆうこ/ 国家公安委員長も同じ認識か?
坂井国家公安委員長/ 産業別労働組合についても、憲法28条や労働組合法の保障は及ぶものと認識している。

大椿ゆうこ/ 関西生コン弾圧事件では、組合員たちが国家賠償請求訴訟を起こし、違法な逮捕・恣意的な長期勾留について、各府県警察や国の責任を問うている。東京地裁で今年2月と3月の2回にわたって証人尋問が行われ、3月には現職の検察官3名と和歌山県警の警察官が出廷した。この証人尋問で、和歌山県事件の捜査責任者であった警部が、産業別労働組合の活動を理解していなかったと思われる発言をしている。
<証人尋問でのやり取り>
弁護士 「元暴力団員の男2人がやってきて、どなったり、撮影したりする行為が関生支部の団結権を脅かすものだということは明らかですよね」
警部 「そこはちょっと分からないです」
弁護士 「大阪高裁の判決を読まれましたか」
警部 「ちゃんと読んでいない」
弁護士 「裁判所は、こんな暴力団員が事務所にやってきたら団結権を脅かされるのは明らかだと言っているが、あなたはそう思っていなかったんですか」
警部 「当時はそう思っていなかった」
弁護士 「この事件には(和歌山広域協に関生支部の)組合員がいないから交渉相手にはならないと、陳述書に書かれていた。あなたが当時このような認識で、今も同じ認識ということでよろしいですか」
警部 「これは当時の認識です。今は産業団体という話もありますので勉強しています」
弁護士 「あなたは、当時の認識としては、組合員らの行為は労働運動に当たらないと考えていたんじゃないんですか」
警部 (無言)
弁護士 「そうですよね、そう書いてありますよね」
警部 「そうですね」
このことについて、どのように受け止めているか。警察官に労働法教育が出来ていないのではないか。
政府参考人[警察庁]/ 現在も国家賠償請求訴訟が係争中なので、回答は差し控えたい。
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