産別組合にも保護が及ぶ!
大椿ゆうこ/ 2月26日に、労働組合のストライキ活動などが刑事事件とされた京都事件で、被告人とされた労働組合(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部、以下関生支部)の委員長ら2名に対し、京都地方裁判所が無罪判決を出した。大臣はこの事件について知っているか?
福岡大臣/ 報道で承知をしている。
大椿ゆうこ/ 関生支部は近畿2府4県の生コン労働者を組織する産業別労働組合だが、2018年7月から2019年11月にかけて、ストライキやビラ配り等の組合活動をしたことを理由に、18回延べ81人もの組合員が繰り返し逮捕・起訴された。京都事件の特徴は、関生支部と対立関係にある大阪広域生コンクリート協同組合という事業者団体が、人種差別・排外主義活動で悪名をはせてきた人物たちに金銭を払って関生支部のイメージダウンを図るフェイク動画を拡散し、デマ街宣を行ってきた点にある。大量に拡散されたフェイク動画などで、関生支部は労働組合の仮面をかぶった反社会勢力・極左暴力集団だと信じ込まされた人たちがたくさんいる。国会議員の中にもこれに乗っかり、国会の中で(デマに基づく)質問をしたり、デマを発信することで、関生支部への弾圧にお墨付きを与え、加担した人がいる。
日本は企業別労働組合が主流だが、関生支部のような産業別労働組合も存在している。産業別労働組合であっても憲法28条の保護は及ぶか?
福岡大臣/ 労働者の団結権・団体交渉権・団体行動権(労働三権)は、憲法第28条及び労働組合法等の関係法令により保障されている。産業別労働組合は、同一産業に従事する労働者が直接加入する大規模な横断的労働組合であり、団体交渉により産業横断的な賃金・労働条件の基準を設定するものだと承知している。このように労働者の団結権に基づいて結成された産業別労働組合についても、憲法第28条や労働組合法の保障は及ぶものと考えられる。
大椿ゆうこ/ 京都事件は労働争議の解決金を要求したことがが恐喝等とされた事件だ。裁判所や労働組合の関与の下で労働争議が和解に至った際、使用者側が労働組合に解決金を支払った例は数多ある。私自身もかつては労働組合の専従職員だったので、不当解雇された人たち、賃金未払いや雇い止め解雇をされた人たちの解決金を取る交渉をしてきた。高嶋久則・佐藤香・高田正昭・千々岩力編著『現代実務法律講座 不当労働行為審査手続き』(青林書院, 1986年)には、「和解が成立した場合、ほとんど例外なく、…被申立人から申立人側に金銭が支払われている。小は数万円から大は数億円までの例まで、金額もその内容も千差万別である」と記されている。労働紛争解決のための実務として、解決金という方法は定着していると思う。厚労省も同じ認識か?
福岡大臣/ 労働争議の解決に当たり、労働組合が使用者に解決金を求めることについては、それが労働組合の活動として正当なものであれば民事上及び刑事上の免責が認められる。解決の一つの方法として解決金というものがあるということは指摘の通り。
大椿ゆうこ/ 解決金の交渉等をやってきた立場として、自分がやってきたことが恐喝・共謀と言われるものだとは一度も思ったことがない。不当解雇・未払賃金等の交渉に当たり、解決金という形でお金を得るということは、労働争議の中で認められた解決方法の一つである。

警察・検察による労組弾圧の検証を!
大椿ゆうこ/ 京都事件は、企業閉鎖に伴う雇用保障と解決金の支払を約束した労使協定を守れと要求したことや、そのためのストライキ活動を、労働争議の解決から5年も経過した後に警察と検察が企業恐喝に見立てて刑事化したものだと弁護団から聞いている。しかし、京都地裁判決では、ストライキは事業者側が協定内容を履行しなかったことに応じてされたものであり、脅迫に該当するような評価は出来ないとして検察側の主張を退け、無罪を言い渡している。
関西生コン事件では、本件の無罪判決以外にも、ビラまき活動を威力業務妨害だとして逮捕・起訴した事件などで、次々と無罪判決が出ている。組合関係者によると既に3件、延べ11名の無罪判決が確定している。有罪率が99.9%と言われる日本の刑事司法でこれだけ無罪判決が出されているのは異例であり、検察・警察の捜査には、憲法28条の保障する労働基本権や、正当な組合活動についての刑事免責を明記した労働組合法1条2項を侵害する重大な誤りがあったのではないかと言わざるを得ない。厚生労働省として、重大な関心を持ってこの組合弾圧事件について調査・検証すべきと考えるが、大臣の見解は?
福岡大臣/ 現在行われている訴訟に係る個別案件なので、厚生労働省として調査を行うことについては考えていない。
大椿ゆうこ/ 京都事件に関しては、3月12日に検察は控訴した。詳細な事実認定に基づき、検察の主張も丁寧に吟味した上で出された公正な判断を真摯に受け止めない検察の姿勢には強い憤りを覚える。昨日、狭山事件の石川一雄さんがお亡くなりになったが、自分たちこそが正義で決して間違っていない、間違っていてもそれを後から認めることはしないという検察のおごりが、こういう冤罪事件の温床になっているのではないかと思う。大臣には、戦後最大の労働組合弾圧と言われている関生支部への弾圧事件について引き続き関心を持っていただくとともに、警察・検察がどのように関わってきたのについて注視して頂きたい。
※関生支部弾圧事件部分の動画はこちら