3月3日(月)、大椿ゆうこは「死刑廃止フォーラム」の皆様と共に大阪拘置所を訪れ、収容される死刑確定者の処遇等について聞き取りを行いました。拘置所長との面会を求めていましたが、所用で都合がつかなかったとのことで、総務部長他4人の職員の方が対応して下さいました。
市民団体の要請と、拘置所側の返答の概要は以下の通りです。
①テレビ視聴について
以前は可能であったテレビ視聴が出来なくなった。特にスポーツ中継は、生放送の視聴に意味がある。テレビの視聴が再びできるよう、施設の充実・運用改善を図って欲しい。相撲や野球は楽しみにしている人が多いはずなので、見せてあげて欲しい。
被収容者の中で、移送待受刑者(どこの刑務所に行くか決定するまで一時的に収容される受刑者)等には、予算制約もあってテレビを見せられていない。死刑確定者については、他の被収容者との均衡、また死刑確定者の心情の安定を確保するため、現在のDVD視聴と言う運用を行っている。テレビ番組の中には、心情等を害するものもあるので、その予防が必要である。
DVDの内容は工夫しており、計100種類、スポーツ、娯楽、映画等、定期的に中身を入れ替えている。職員がテレビ番組を録画したものも取り揃えている。
今後もこのDVD限定と言う運用を続けるかはわからず、法律の趣旨に則り、より視聴覚の処遇を充実させるようにしたい。
②入浴・シャワー時間について
以前は1回20分だった入浴時間が15分に短縮された。死刑確定者の衛星保持の悪化に繋がるため、20分に戻して欲しい。また、シャワー時間も延長して欲しい。
15分という入浴時間で、被収容者の衛星保持に特に悪影響をきたしているとは考えていない。シャワーは試験的に一日10分、週3回の運用を行っている。職員の配置や給湯能力の関係で、それが精一杯である。
③手紙の発信について
大阪拘置所は1日1通7枚とされているが、東京拘置所では枚数制限がなく、札幌・仙台・名古屋・広島拘置所では1日2通発信できる。大阪拘置所も、1日2通枚数制限なしにして欲しい。
職員の配置や、送受信の取り扱い能力、被収容者間の均衡の関係で、今のところ1日1通7枚までという運用にしている。緊急時や、被収容者から個別に申出があれば、制限を超える通信を認めることもある。都度丁寧に対応している。
④私物保管限度量について
大阪拘置所の保管限度量は80Lだが、札幌拘置所は85L 、名古屋拘置所は91L、広島拘置所は104Lとなっている。大阪拘置所の保管限度量を拡大して欲しい。また、再審請求に係る裁判資料等の廃棄を指示することはあるのか?
部屋内の保管スペースに限りがあるので、保管限度雨量は法令の範囲内で現状のように定めている。
裁判資料は限度量の計算に入れないため、たくさんの資料を持っている被収容者はいる。ただ、荷物が溢れている人には、裁判資料とそれ以外の荷物が混じっている人が多いため、「本当に裁判資料なのか判るように説明して」と求めるときがある。私物と判明したものや、裁判が終わった後の裁判資料は、廃棄や宅下げを勧めることがある。
⑤余暇活動について
<要請>
札幌拘置所では、委嘱指導者による短歌・俳句・書道・仏画等の指導が行われている。死刑確定者の心情の安定を保つため、大阪拘置所でも同様の運用をして欲しい。また、札幌・仙台・東京・名古屋・広島拘置所では囲碁・将棋の貸与を受けることが出来るので、大阪拘置所でも受けられるようにして欲しい。
余暇活動は大切と考えている。被収容者から申し出があれば、個別に生活の状況を見ながら出来るだけ対応しているが、指導者の確保が困難である。指導者をしてくれる人がいて初めて成り立つ活動なので、指導者確保が出来ればもっと多くの余暇活動が実施できる。
囲碁将棋は1人で行えるものではないため、単独室では貸与していない。(※市民団体側は、他の拘置所では一人で詰将棋が出来るようにするため貸与していると指摘)
⑥カメラ室(監視カメラ付きの単独室)について
女性の死刑確定者をカメラ室に入れ、男性職員が監視を行っていれば、人権侵害に当たる。監視は女性職員のみで行っているのか、明らかにして欲しい。
カメラ室に入っている女性被収容者はおり、その場合は十分な配慮をしている。女性職員の数に限りがあるため、男性職員が監視をしている時間帯もある。男性職員が見ても人権侵害にならないよう、問題のある部分が見えないよう出来る限りの措置をしている。どこを見えないようにしているかは、その間隙をついて自殺を図られるようなことがないため、明らかには出来ない。女性職員は施設努力で増やせるため、増やす努力をしている。
自傷行為の防止等、必要性があるのでカメラ室を使っているが、むやみやたらにカメラ室を使おうとは思っていない。
その他、事前に質問した項目の他、拘置所内の空調環境や健康管理について質問がありました。
拘置所は全館空調で、各室に温度計を設置し、室内が20度前後で保たれるよう運用しているそうです。また、健康診断は定められた期間ごとに確実に行っている他、職員が異常に気付けば、すぐ医師の診察を受けるようにしており、拘置所内で一通りの検査が出来るようになっているとのことです。
死刑制度は、冤罪の場合取り返しがつかないことに加え、死刑確定者に接する刑務官・拘置所職員の方にも重い負担を課すものです。拘置所がどのような環境なのか、広く知っていただくことを通じ、死刑制度そのものについても議論できればと思います。