11月27日(水)、朝10時より参議院議員会館にて、韓国の労働組合、及びその支援者の皆さんが、日東電工・韓国オプティカルハイテック社による労働者の権利侵害問題について記者会見を行われました。
日東電工の100%子会社である韓国オプティカルハイテック社(亀尾市)は、2022年10月の火災を機に廃業しました。携帯のショートメールで会社の清算を通知し、労働者の雇用を一方的に奪った訳ですが、会社側は労働者と一切対話せず、説明会も開きませんでした。雇用承継を求めて声を上げる労働組合との団体交渉は拒否し、挙句には組合に対し、非人道的な弾圧(組合事務所への電気・水の供給を絶ち、組合員の住宅保証金まで仮差押えする等)を行いました。
210人の労働者の内、193人は希望退職に応じました。残る17人は、韓国オプティカルハイテック社の事業が移された先である平沢市の別の子会社「韓国日東オプィテカル」社で働き続けたいと求めました。現在も7人の労働者が雇用承継を求めて闘い続けていらっしゃり、2人の女性労働者は火災が起きた工場の屋上で300日以上高空籠城を継続されています。
韓国の労働組合や支援者の皆さんは、日東電工の事業の中で行われた一連の行為が「OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針(※リンクは外務省による日本語仮訳)」や、日本政府自ら策定した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」に違反していると訴え、日本にも度々いらっしゃっています。今回は、日本NCP(OECD行動指針の普及や、それに関連する問題の解決を担当する日本の連絡窓口)への問題提起書の提出等を行うため、2週間日本に滞在されました。日本NCPとの面会については、こちらのブログ記事をご参照下さい。
会見で韓国の皆さんが強調されていたのは、これが日本の問題だということです。崔鉉煥(최현환/チェヒョンファン)・金属労組亀尾支部韓国オプティカル支会支会長と裵泰善(배태선/ペテソン)・全国民主労働組合総連盟慶北地域本部教育局長は、韓国オプティカルハイテック社の経営方針や人事は全て親会社である日東電工本社が決めていたため、日東電工が団体交渉に応じるべきだと主張されました。
孫德憲(손덕헌/ソンドクホン)・全国金属労働組合中央本部副委員長は、「日東電工のせいで、韓国社会における日本のイメージが悪くなっている」とし、日本政府に対し、ビジネスと人権ガイドラインに違背する日東電工を放置せず、労働組合と話し合うよう会社を指導することで信頼できる政府としての姿勢を見せて欲しいと訴えられました。
崔・支会長も、「日東電工には国際基準を守る責任が、日本政府には会社を指導する責任がある」とした上で、日東電工はこれまで事業を整理する際、配置転換等で労働者の雇用を維持することを慣行としてきたにもかかわらず、韓国では自らの慣行にすら背いていると批判されました。その上、日東電工は解雇撤回を求めて闘う組合員に損害賠償を請求し、住宅保証金や預金通帳を差し押さえ、組合事務所への水・電気の供給を絶ち、「希望退職に応じて慰労金が欲しければ日本語で反省文を書け」と迫るという、「反人権的」な労働者弾圧を行ったのです。にもかかわらず、「日東電工は、表向きは(ホームページ等では)人権を尊重するグローバル企業だと恥ずかしげもなく装っている」と、崔・支会長は声を強められました。
労働組合の闘いを支える聖公会大学の大学生・李勲(이훈/イフン)さんは、これまで30~40年間、日本企業は韓国に進出し、利益を「食い逃げ」するパターンを繰り返してきたと主張されました。日東電工も他の日系企業同様、韓国政府から土地の無償提供や租税の減免といった恵沢を受けてきたのです。高空籠城されている女性の一人であるパク・チョンへ(박정혜)さんは、ハンギョレへの寄稿の中で、「韓国オプティカルハイテックは外国投資企業として2003年に亀尾国家産業団地に入居した際に、土地の50年間無償貸与、法人税や取得税の減免などのあらゆる恩恵を享受し、18年間で7兆7000億ウォンを売り上げた。原材料や商品の購入費などでそのうち6兆ウォン以上が本社へと流れ、それとは別にロイヤリティーと配当として2000億ウォンほどが本社に支払われた」と書かれています。
李さんは、「誰も取り締まらないから、企業が好き勝手に(ビジネスと人権の規範に対する)違反をしてきた」とし、日東電工に対する闘いは、グローバル企業で働く人が同じ目に遭わないようにするための「過去と未来を分ける闘い」だと訴えられました。その上で、日本政府が人権を守るという方向を明らかにして欲しいと願いを述べられました。
記者会見には、韓国の労働者の闘いを支援する日本の労働者・市民団体も参加しました。渡邉洋・全国労働組合連絡協議会(全労協)議長は、「優遇を受けながら現地の労働者を弾圧するという流れに終止符を打たないと、韓日の民衆レベルの友好や労働者同士の連帯を築けない」とし、日本の労働団体が動くように力を尽くしたいとの考えを述べられました。
また、「韓国オプティカルハイテック労組を支援する会」の尾澤孝司さんは、「日本人として海外で人権侵害を行う企業が恥ずかしい」と支援を行う思いを語り、「希望退職したければ日本語で反省文を書けということには、戦前の日本企業のやり方が続いているような気がする。戦前・戦中の日本企業の問題が未だ解決されていない」との考えを述べられました。
日東電工の問題は、韓国社会では既に労働者の問題と言う範疇を超えているそうです。7月26日には3人の国会議員が来日し、安浩永・環境労働委員長の名義で書かれ、96人の国会議員が署名した書簡文を外務省・厚労省に提出し、日本政府の積極的対応を求めました(その様子は社会新報の記事をご参照下さい)。個別企業の問題について、国会議員が相手国の政府に書簡文を直接手渡したのは初めてのことだそうです。他にも、宗教家・芸術家などの間に支援の輪が広がっています。裵・教育局長は、「これほど韓国で注目されているのに日東電工が動かないのは、日本社会が沈黙しているからだ」と、日本社会、とりわけ日本メディアの無関心を追及されました。
大椿ゆうこは、「これは日本人の問題で、日本の政治家が解決していくべき問題だ」とし、「多くの人にこの問題を知っていただけるよう発信して欲しい」と、記者会見に参加された報道関係者・市民の皆様に呼び掛けました。
韓国の皆さんは、11月29日に出国されます。「働き続けたい」と声を上げ続ける7人の労働者の当然の願いが叶うよう、私たちも日本で力を尽くし、韓日間の連携を引き続き深めていきたいです。この問題についても、何か進展があり次第、ブログでご報告致します。
※記者会見の動画はこちら。