11月26日(火) 日本企業は「ビジネスと人権」を守れ!韓国の労組・活動家が日本NCPに申し立て

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11月26日(火)、来日されている韓国の労働組合・市民団体の皆様と共に外務省を訪ね、日本NCP(National Contact Point)に対し、日東電工の子会社・韓国オプティカルハイテック社が労働者に行った権利侵害が「OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針(※リンクは外務省による日本語仮訳)」(以下、単に「行動指針」)に反している旨の申し立てを行いました。

NCPは「行動指針」の普及、「行動指針」に関する照会処理、問題解決支援のため各国に設置されている連絡窓口で、日本NCPは外務省・厚生労働省・経済産業省の三者で構成されています。

日本の日東電工の完全子会社である「韓国オプティカルハイテック」社(亀尾市)は、2022年10月4日に発生した工場火災を理由に廃業を発表し、その従業員は一方的に仕事を奪われました。この工場で行なわれていた作業は平沢市にある別の子会社「韓国日東オプィテカル」社の工場に移され、そこでは新規採用が続けられていますが、亀尾の工場で働いていた労働者の雇用は承継されませんでした。今も7人の労働者が、雇用承継を求め、闘いを継続されています。

大椿ゆうこは、今年7月に社民党訪韓団として訪韓した際、当該労組の方と交流したことをきっかけに、当事者の皆さんと日本政府とを繋ぐ窓口役をお引き受けして参りました。7月26日、訪日された労働組合及び国会議員の皆さんが外務省・経産省に書簡文の提出・記者会見を行った際もご一緒しました。その時の様子は、こちらの社会新報の記事をご参照下さい。

日本政府は、「個別企業の経営権に関わる事項であり、韓国の司法で係争中のため、介入出来ない」との姿勢です。解雇された労働者の救済も全く果たされていません。そこで、韓国の皆さんは、労働者との協議を行わず一方的に大量解雇を行い、「働く権利」を求める労働組合に報復(組合事務所への電気・水の供給を絶ち、組合員の住宅保証金まで仮差押えする等)を行った韓国オプティカルハイテック社の親会社である日東電工はOECDの「行動指針」に違背していると、韓日両方のNCPに申し立てを行うことを決意されました。

韓国NCPに対しては、10月に問題提起書の提出を済ませ、「次は日本」と来日されたのは以下の5人の方々です。

  • 孫德憲(손덕헌/ソンドクホン) 全国金属労働組合中央本部副委員長
  • 崔鉉煥(최현환/チェヒョンファン) 金属労組亀尾支部韓国オプティカル支会支会長
  • 裵泰善(배태선/ペテソン) 全国民主労働組合総連盟慶北地域本部教育局長
  • 尹智洗(윤지선/ユンジソン) 「ソンジャプコ(손잡고)」所属の活動家
  • 李勲(이훈/イフン) 聖公会大学 学生

日本NCPからは、外務省(経済局経済協力開発機構室)、厚労省(大臣官房国際課)、経産省(経済産業政策局投資促進課)の担当者が出てきて下さいました。

問題提起書(※概要はこちら)を提出した後、労働組合の皆さんが思いを述べられました。

孫・副委員長は、日本政府に対し、日東電工が国際的な人権基準に基づいてビジネスを行っているか確認し、違反があれば積極的に指導をするよう求められました。日東電工はホームページで「人権に関わる国際規範に基づき、人権を尊重」すると謳っていますが、実際は労働者の弾圧を行っているためです。

裵・教育局長は、日東電工はグローバル企業として国際規範に則っていると世界に約束しているはずなのに、自ら掲げる理念にも日本政府が定めるビジネスと人権ガイドラインにも違背していると批判されました。今回の申し立てには、韓国側のみならず、「インダストリオール・グローバルユニオン」(140か国、5000万人を代表する産別組合)も参加しているとし、世界の労働者が日本政府の対応に注目していると訴えられました。

崔・支会長は、日東電工側が労働組合を犯罪者のように扱って報復・圧迫を行っていることが許せないとし、日本政府は日東電工に対し、労働者と対話し、表現・結社の自由を奪う弾圧を行わないよう促すべきだと主張されました。

日本NCPは、既に韓国NCPに提出された問題提起書は共有されているとした上で、問題提起書の内容を精査し、韓国NCPと協議しながら適切に対応すると返答しました。「各国のNCPの役割は、問題解決に向けて当事者間の対話を斡旋することである。受領通知を発出し、初期評価を実施した際、本件がさらなる検討に値するとなれば、被提起企業と問題提起者との対話の斡旋・調停を提供し、両当事者にNCPからの対話の斡旋の提供を受けるか確認する」との回答もありました。

OECDの行動指針自体に法的拘束力はなく、日東電工に対話の場に来るよう命じることも出来ないとの限界はありますが、韓国の当事者の皆さんが求める団体交渉の実現に繋がることを願います。

労働組合の方々が求めているのは、働きたいと希望している7人の労働者の雇用を承継することです。裵・教育局長は、日東電工は以前子会社間の人的交流を行っていたとし、韓国オプティカルハイテック社の労働者のみ雇用承継を拒否するのは韓国人に対する差別と組合嫌悪のためではないかと批判されました。

韓日両方のNCPが関わるため、申し立ての処理には問題提起書の正式受領から1年2カ月以上かかるかもしれないとのことです。労働者の皆さんは事故のあった亀尾市の工場の屋上で高空籠城(今日が324日目)をしたり、平沢市の韓国日東オプィテカルで座り込み(今日が192日目)を行ったりして、今も闘っておられます。これから冷え込みが厳しくなる中、皆さんの健康が危惧されます。孫・副委員長は、特に高空籠城している2人の女性労働者の健康が心配だとし、2人の体調に何かあれば外交問題になるとして、日本政府がNCPの判断結果に拘わらず、会社側に労働者との対話に応じさせるための対応を取るよう求められました。

大椿ゆうこは、「日東電工が団体交渉に応じていれば日本NCPの手を煩わせることもなかったはずだ。7人の雇用継承という韓国側の要求は実現可能だと思うが、会社が労働組合を嫌っているために問題が解決しない。日本の政治家として、このような企業があることを恥ずかしく思う」とし、「日本NCPにはきちんと調査し、良い方向にもっていくために力を貸して欲しい」と求めました。

日本NCPの担当者の皆さんは、45分ほど時間を取り、韓国の皆さんの声をしっかり聞いて下さいました。

明日11月27日(水)は、10時より、参議院議員会館B107会議室にてこの間の経緯や、今日の報告のための記者会見を行います。一般の方もご来場いただけますので、ご関心のある方は是非とも足をお運びください。

※日本NCPの回答の要旨はこちら、記者会見のプレスリリースはこちらです。

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