わかる言葉で、政治を自分のものに
大椿/ 東京都知事選での一人街宣も印象的でした。
和田/ 杉並区で岸本聡子区長を誕生させた際も、一人街宣の取り組みがありました。都知事選でも一人街宣をしようという呼びかけがSNS上であり、私も自分の住む中野区の四つ角に立ちました。
大椿/ 大阪では、都構想の住民投票の時、ゼッケンをつけたおじさんが交差点で「大阪を残しましょう!」と呼び掛けているのを見たり、手書きで「大阪を残そう」という趣旨の短歌を書いたビラがコピーされて家のポストに入れられていたりすることがありました。今日ご来場された方の中には、「カジノの是非は府民が決める」と住民投票条例の制定を求める署名運動をされた方もたくさんいらっしゃいます。
和田/ 都知事選の一人街宣は、地声でしなければならない、「蓮舫さんに入れて下さい」という投票呼び掛けは出来ない等の制限はありましたが、どこでも自分が好きな時に活動できるというのは大きな発見でした。自分が政治の主人公になった感じで、とても楽しかったです。蓮舫さんは非正規の公務員を減らすと言っていたので、私はそれを強調して訴えていました。
大椿/ 私と一緒です。私も東京にいるとき一人街宣をしていましたが、そればかり訴えていました。
和田/ 初めて都知事選挙で、「私たちが民主主義を作れる」と感じました。これを続けていけば良いのだと思います。
大椿/ 選挙結果を残念に受け止めた方も多いかもしれませんが、一つの活動の方法を見つけられたのは大きな意義があると思います。
和田/ 政治家の街宣は、難しいことをそのまま言ってしまいます。理解できないことを大きな声で話されると、聞き手はイライラしてしまいます。逆にわかる言葉は耳に入ってくるし、「私は今政治が判っている」という喜びにもなります。大事なことは伝えなければならないけれど、重要な政策をどうしたら街行く人に判ってもらえるか考えることが大切だと思います。
シングル・非正規女性に必要な政策とは
大椿/ 非正規問題が私たちを繋げたキーワードだと思います。先ほども和田さんが、40代・50代をずっとアルバイトで暮らしてきて、コロナ禍に遭い、世の中の過酷さを感じたとの話がありました。そんな生きづらさをどう克服したらよいのか、一緒に考えたいと思います。
和田/ 東京都でも就労支援プログラムが色々あるのですが、ITなどの高いスキルを無料で教えてくれるものの条件の良いものの多くは「39歳まで」といった年齢制限があります。逆に、50代でも受講できるものは、マンション管理と言った時給が安く非正規の仕事に関わるものが多いのですが、テキスト代が13,000円もしたりします。私たちの世代は就労支援からも排除されているという根本的な問題を変えねばなりません。
大椿/ 和田さんは著書の中で、住宅問題についても熱心に書かれています。
和田/ 非正規女性にとって、住宅は深刻な問題です。日本の住宅政策は家父長制的な、正規雇用で働くお父さんが持ち家を買うことを前提にしたものになっています。賃貸住宅に一人で暮らす人のことが全然想定されていませんが、非正規で働く人は収入の3~4割を住宅費に充てています。住宅問題はジェンダーと密接にかかわっています。女性は、「2階以上が良い」「明るい地域が良い」など、男性以上に住宅の安全性を必要とします。特にシングルで暮らす女性は、住宅に求める条件が多く、住宅費も多くかかってしまいます。その点を念頭に置いた住宅政策が必要です。
大椿/ 大事な政策提言を頂きました。住宅費の負担が軽くなるだけで生活はずいぶん楽になると思います。とりわけシングル女性の生活を支えるために、重要な観点だと思います。
和田/ 私は住宅扶助を増やすより、安心して長く住み続けられる公営住宅をもっと増やして欲しいと思っています。
大椿/ 大阪では、空き家になっている公営住宅が多くあります。公営住宅の住居には色々条件があり、単身者は入居しづらいですが、その条件を緩和すること、また若者支援やDV被害者のシェルターのように様々な使い方、多くの世代に開いていくことも大事だと思います。