8月10日、大阪で2025年の参院選に向けた大椿ゆうこ総決起集会を開催しました。お盆前の週末ではありましたが、会場は満杯になりました。ご来場いただいた皆様、またツイキャスで視聴くださった皆様に心から感謝申し上げます。
総決起集会ではライターの和田静香さんをゲストにお招きし、「時給はいつも最低賃金 こんな社会をどう変える?」と題した対談を行いました。何時間でも聴けそうな白熱した対談の様子をご報告します!
シングル女性の生きづらさを本に
大椿ゆうこ/ 和田さんの著書の中で、「これから年を取っていく50代・60代の女性たち、シングルで、不安定な非正規雇用で働いてきた女性たちのために働いてくれる政治家はいないのか」と書かれていました。
和田静香さん/ 『50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考えた身近な政治のこと』は、まさにそのことを書きました。私は50代でシングルですが、シングル中高年女性の貧困や生活困窮は大きな問題なっています。しかし、私たちの問題は置き去りにされていて、何の支援もありません。それを何とかするには、その問題に共感して法律を変えてくれる女性の政治家が必要だと思って、この本を書きました。
大椿/ 「その政治家って私のことだろう」と思ったので、今日のゲストにお招きすることにしました。ちなみに、和田さんが最初の政治本『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた』を出された時、周囲はどのような反応でしたか?
和田/ 私はずっとバイトで、最低賃金で働いてきました。そんな風に働いていると、こんなダメなのは自分のせいなんだと思ってしまう。誰も相談に乗ってくれないし、そもそも相談しようとすら思えません。誰も自分のことなんて助けてくれない、まして政治が助けてくれるなんて一ミリも思わないんです。しかし、衆議院議員の小川淳也さんと対話する中で、これは自分のせいではなく、社会構造がすごく悪いんだと気が付きました。この本では「私は悪くない」と気づいたことを書いているのですが、私と同じようにずっと非正規で働いてきた女性の読者たちが、「和田さんは私だ」「社会が悪いんだ」「政治にもっと目を向けたら良いんだ」というメッセージをたくさん寄せてくれました。
大椿/ 特に同世代の反応が大きかったのではないですか?
和田/ 同世代や、私より少し下の就職氷河期世代、さらには非正規で働く30代くらいの方も多かったです。30代くらいの方は、このままずっと非正規シングルなのかという不安を抱えていました。世代は違っても、抱えている苦しみは全く同じだと気づきました。
大椿/ 私は44歳で結婚しましたが、「このままずっとシングルなのかな」と思っていた期間も長かったです。非正規雇用で働く期間も長く、今でこそ「悪いのは社会だ、政治だ」とゆるぎない思いを持っていますが、かつての私はそうではありませんでした。関西学院大学で雇止めに遭ったとき、「仕事があるのに雇止めにするのはおかしい」と思って継続雇用を求めて闘いましたが、当初は雇止めのおかしさに確信が持てませんでした。最初に契約期間の定めがあることは提示されていて、私も理解して契約を結びました。そもそも、この仕事をしようと思ったら有期雇用の選択肢しかなかったのですが、自分はこの仕事をやりたいと思って選びました。結局この契約を結んだのは私なので、親・姉・友達・上司からは「いまさらそのことに文句をつけるあなたはおかしい」と言われました。「やっぱり私がおかしいのかな?」と思いながら友達が紹介してくれた労働組合に行ったとき、そこの組合員の方が「有期雇用がおかしいという大椿さんの直感は間違っていない」と初めて言ってくれたんです。それでも自分が悪かったのではないかという思いはなくなりませんでしたが、労働組合に入って団体交渉をする中で、自分のために声を上げてくれる周りの人たちがいることが私の背中を押し、「社会の仕組みが悪い」との確信を持てるようになりました。非正規労働者や個人事業主として不安定な暮らしをする人が、「それは社会の問題だ」と思うためには、色々な人たちからの情報や支え、また時間が必要なのではないかと思います。
和田/ 非正規・有期雇用は、「選択させられている」んです。私の友人も60代で非正規の図書館司書として働いていましたが、65歳になったときにきちんとした説明もないまま突然「定年だから」と言われてクビを切られてしまいました。
大椿/ 非正規労働者は労働組合に入れないことも多く、雇用契約書の読み解き方を教わる機会を持てない場合もあります。使用者は、雇用期間の定めのような条項を、小さくこそっと入れてくるんです。いつも通りだと思ってサインをしたら、「契約は今年が最後」と書かれていたこともあります。私は非正規雇用で働く人たちに、「あなたたちの問題ではない」と伝えたいと思っています。
和田さんが見た国会
大椿/ 和田さんは、第213回国会をどのようにご覧になりましたか?
和田/ まず、「第213回国会」と言われても、私のような素人は「いつからいつまでのことなのだろう?」と思ってしまいます。永田町の常識が、私たち庶民とかけ離れているんです。
大椿/ 確かに、国会の回数なんて数えていませんよね。
和田/ 国会の動きをリアルに感じられず、裏金問題についても最終的にどうなったか未だに判っていません。
大椿/ 国会終盤になって政治資金規正法が改正されましたが、企業団体献金の規制に全く手を付けていないことが最大の問題だと思います。
和田/ 結局、一枚2万円のパーティー券をどんどん買えるような企業団体からの献金がこれからも続くんですよね。私なら、2万円あればどう使おうか、真剣に悩んでしまいます。
大椿/ それだけ選挙にお金がかかるということかもしれませんが、本当にそれでよいのか。有権者もそれを当たり前にしていないか、みんなで考えたいと思っています。
和田/ 政治資金規正法以外では、セキュリティクリアランスの問題がとても気になっていました。何か全くわからないうちに決まってしまって…
大椿/ 皆さんに問題が伝わらないうちに決められてしまった感じがします。この法案は内閣委員会所掌で、厚生労働委員会はほとんど議論に参加していませんでした。しかし、身辺調査の対象にされるのは労働者です。労働者本人のみならず、その家族の過去の国籍等まで調べ上げることが定められており、国籍や出自による差別を防ごうとしてきた厚生労働省の施策に逆行します。
和田/ こんなに大事な法案を、これほど性急に決めてしまうことが怖いと思います。
大椿/ 国会に来て、法案は出された時点で大方決まっていると感じました。法案が作られる前の段階で、有識者が長い議論をしています。その段階をしっかり見ることが重要だと思います。現在「労働基準関係法制研究会」が開かれており、現行の労働法制を変えようという動きがあるようです。働き方改革の名の下での改悪がされないか、注視が必要だと考えています。