有期雇用の入口規制が必要では?
大椿ゆうこ/ この法律ができた時、自分の労働争議は既に終わっていた。上限4年の有期雇用だったので、「この法律が出来ても私は救われない」と思った。しかし、私はこの法律ができたことをとても前向きに受け止めた。不十分とはいえど、この一歩を踏み出したことで、有期雇用労働者が無期雇用転換でき、声を上げられるようになると考えた。この規定を作るにあたり、無期雇用転換権が発生するまでの勤続年数を5年、但し大学教員や研究者などの「高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者」は特例で10年と設定した根拠は何か?
政府参考人[厚労省]/ 無期転換の要件を通算契約期間が5年を超える場合としたことについては、有期労働契約の反復更新による濫用(※実質的には無期雇用とすべきところ、有期労働契約を繰り返すこと)を防止する必要がある一方、有期労働契約が雇用機会の確保などに一定の役割を果たしていることとのバランスを慎重に考慮した結果、労働政策審議会における公労使一致の建議として「5年」とされた。「高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者」の特例については、「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」等において研究者等の無期転換申込権発生までの期間を10年としていることを参考にした。
大椿ゆうこ/ 有期雇用が雇用機会の確保に資するというのは、「誰の視点で語っているのか?」といつも思う。私は、労働者の視点で語っているとは感じられない。無期雇用転換権発生の手前で雇い止めされる人たちが出てくるだろうということは、既にこの法律ができたときから想定していた。2013年の改正法施行以来、無期雇用転換を巡って労使が争った訴訟及び労働委員会における労働争議の件数、又は無期雇用転換を阻害する事業所に対して厚労省が啓発の件数を示して欲しい。
政府参考人[厚労省]/ 訴訟及び労働争議の件数については、網羅的には把握していない。また、無期転換ルールの適用を免れる意図を持って雇い止めが行われるなどの事案を把握した場合には、都道府県労働局が適切に啓発指導を行っているが、社会的に注目される事案については本省に報告させている一方、啓発指導の全数を上げろとは言っていないので、件数については集計していない。
大椿ゆうこ/ いつ首を切られてもおかしくない環境の中で働いている有期雇用労働者は、雇用の問題について声を上げることが難しい。問題として表に出てくるものは本当に氷山の一角で、そこの下には声を上げられず泣き寝入りするしかなかった人たちが山ほどいることを考えて頂きたい。労働契約において、予め更新年数・回数の上限を設けている使用者について、実態調査は行っているか?
政府参考人[厚労省]/ 2020年に厚労省が実施した実態調査において、有期契約労働者の勤務年数の上限を設けている割合は14.2%である。
大椿ゆうこ/ パタゴニアのように無期雇用転換を逃れようとしている事業者があり、労働者との係争が相次いでいる。有期雇用労働者の雇用の安定と有期雇用の濫用防止のために無期雇用転換ルールを導入したはずなのに、それが実際にはうまく使われておらず、労働争議にまで発展している。このような実態を、大臣はどのように認識されているか?
武見厚生労働大臣/ 労働契約において更新年数の上限を設けることは直ちに法違反となるものではないが、一般論として、無期転換ルールの適用を免れる意図を持って無期転換申込権が発生する前に雇い止めを行うことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましくない。また、2022年12月に取りまとめた労働政策審議会の報告書に基づき、紛争の未然防止や解決促進のため、労働契約の更新上限の有無やその内容について労働基準法の労働条件明示事項に追加するなどの労基法施行規則の改正を行い、今年4月から施行している。
大椿ゆうこ/ そもそも、本来であれば恒常的な仕事を有期雇用にしていること自体が大きな問題だという議論をしなければならない。有期雇用契約の更新上限を5年にする事業所は、無期雇用転換を逃れるためではないかと見抜けるか、厚労省に問われていると思う。引き続き、有期雇用の入口規制について大臣と議論をしていきたい。