【報告・解説】6/11(火) 厚生労働委員会で質問!~無期雇用転換逃れを許すな!~

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6月11日(火)は厚生労働委員会で一般質問に立ちました。

冒頭で「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律」の改正に関連した質問を行ったのち、「パタゴニア裁判」を取り上げながら、労働契約法第18条・19条が定める「無期雇用転換ルール」の実態と、有期雇用の入口規制を行う必要性について質しました。

有期雇用の乱用防止と労働者の雇用安定を目的として2012年に労働契約法改正が行われ、無期雇用転換ルールが導入されましたが、無期雇用転換権の行使を妨げるため更新年数・回数の上限を設定したり、転換権発生直前に雇止めしたり、という事業者も存在しています。法の趣旨を反故にする事業者が存在する以上、無期雇用転換ルールのみでは労働者の雇用は守れません。大椿ゆうこは、「恒常的な仕事を有期雇用労働者に担わせるのがおかしい」と強調しました。

質疑のハイライトをご紹介します(※発言は適宜要約・省略しています)。質疑全体は、参議院インターネット審議中継からご覧いただけます。

国策の過ちを認め、再発防止のための教育を

大椿ゆうこ/ 「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律」を改正し、補償金の請求期限を5年延長するという案が出ている。2019年にこの法律が施行されてから半年間ぐらいは請求件数が非常に多かったが、それ以後は件数が低迷している。その背景には、長年差別と偏見に曝されてきたことによる根強い恐怖があると思われる。私は大学3年生の時、ゼミ合宿で岡山の長島愛生園に行った。1988年、長島と本土を結ぶ邑久長島大橋(「人間回復の橋」)が完成するまで、長島愛生園は本当に隔離された場所だった。ゼミ合宿の時、元患者の方から、「私たちはお召し列車でここに連れてこられたんだ」と言われた。ハンセン病患者を国立療養所に集めるために運行した列車を隠語で「お召し列車」と呼んでいたと聞き、国策の隔離政策に込められた優生思想を強烈に感じたことを覚えている。こうしたハンセン病患者とその家族が歩んできた歴史、そして国策による過ちを多くの人たちに知っていただくため、教育が非常に大切だと思う。旧優生保護法による不妊手術などにも関連するが、ハンセン病患者も、国策によって凄まじく非人間的な扱いを受けた。こうした過ちを再び繰り返さないために、国はこの過ちをしっかり認め、教育の中で伝えていくことがとても大切だと考えるが、副大臣はどのような認識か?

濵地雅一厚生労働副大臣/ ハンセン病に関しては、国の強制的な隔離政策により、多くの元患者の方々やその家族の尊厳が傷つけられ、偏見・差別を受け、平穏な暮らしが妨げられたことを真摯に受け止め、深くおわびを申し上げる。差別解消に向けて全力で取組を進めていかなければならないと決意している。啓発・教育については、厚生労働省として、全国の中学生へ啓蒙用のパンフレットを配付し、国立ハンセン病資料館の学芸員の出張講座の実施などを進めている。今後も文部科学省・法務省との連携を深め、当事者のご意見を伺いながら、しっかりと施策を進めていきたい。

大椿ゆうこ/ 優生思想は隙あらば色々なところで顔を見せてくる。こうした国策による過ちを伝えることが、優生思想を食い止めることに繋がると思うので、大臣・副大臣には、この取組を一生懸命やるようお願いする。

質問でも述べた通り、「ハンセン病元患者家族に対する補償金」は、制度創設直後の2019年は各月900件前後の請求があったものの、その後は請求件数は低迷しました。2024年4月時点の認定件数は8144件で、まだ多くの未請求者がいらっしゃると推定されています。当初は法施行日から5年が経過する2024年11月21日を請求期限としていましたが、議員立法による法改正で、これを2029年11月21日まで5年間延長することになりました。
本法改正案は、6月12日の参議院本会議において全会一致で可決・成立しました。参議院厚生労働委員会では、「国の隔離政策により、元患者のみならず元患者家族等も、偏見と差別の中で、長年多大の苦痛と苦難を強いられてきたことを改めて深くおわびするとともに、偏見差別解消策、偏見差別予防策及び差別被害救済策の一層の充実に向けた努力を引き続き行う決意を新たにする」との附帯決議が付されました。

大椿ゆうこ/ 続いて、2013年4月に施行された改正労働契約法18条・19条の定める無期雇用転換ルールの運用実態について質問する。大臣は、無期雇用転換権が発生する直前に雇い止めされたことは不当だとして、パート従業員が札幌地裁に提訴した「パタゴニア雇い止め訴訟」についてご存知か?

武見厚生労働大臣/ 有期契約で働いていた元パート社員が、パートの雇用期間を最大5年未満とする不更新条項により雇い止めになったことを不当として争っている事案であると承知している。

大椿ゆうこ/ 大臣が説明された通り、今回の裁判は、札幌市内のパタゴニア店舗で2019年からパート社員として働いていた女性が、2023年12月いっぱいで雇い止めされたことは、脱法的な無期雇用転換逃れで不当だと訴えている裁判だ。パタゴニアは雇用期間を5年未満にする不更新条項を設けており、女性は会社と団体交渉を続けていたが、雇い止めに遭ったため今回提訴することとなった。原告が初弁論後の会見で「働くための入口は有期雇用契約しかない。あなたの自由でやった契約ですよねって言われるのは、ものすごい欺瞞だと思う」と語ったが、私自身も有期雇用の労働者として働いていた十数年前、全く同じことを言っていた。原告の言葉を聞き、未だにこういう実態が続いているんだなと感じた。改めて、労働契約法18条が制定されるに至った経緯とその趣旨・目的を説明して欲しい。

政府参考人[厚労省]/ 無期転換ルールについては、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、有期契約労働者の雇用の安定を図るために、2012年の労働契約法改正で導入されたものである。

労働事件の判例等を法規範化した労働契約法は2007年に成立しましたが、その後にリーマンショックがあり、非正規労働者、とりわけその多くを占める有期雇用労働者の不安定さが問題になりました。それを受け、厚生労働省は有期労働契約の規制について本格的検討を始めました。
民主党政権下で開かれた労働政策審議会労働条件分科会では、労働側が有期雇用の「入口規制」(有期労働契約を結ぶことが出来る事由を制限する)・「出口規制」(有期労働契約の反復更新の可能回数・期間に上限を設ける)・「内容規制」(無期契約労働者との差別禁止や均等待遇等の処遇改善を定める)の3点セットを主張し、当初は労使が激しく対立しました。最終的に「出口規制」「内容規制」に絞った労働契約法改正案が国会に提出され、2012年に成立しました(当初改正法第20条で定められた「内容規制」は2020年に労働契約法から削除され、「パートタイム・有期雇用労働法」に引き継がれました)。
現行労働契約法18条は、有期労働契約が5年を超えて更新された場合に労働者が無期雇用への転換を申し込むことが出来、使用者はそれを断れないという「無期雇用転換ルール」を定めています。
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