農家に指示・罰則、余りに傲慢!
大椿ゆうこ/ 食料供給困難事態対策法案について、政府は「国内における食料の供給量が大幅に不足するリスクが増大している」と背景を説明しているが、食料供給困難事態とは具体的にどのような事態を想定しているか?
政府参考人[農水省]/ 今般、世界の食料需給の不安定化により、日本の食料安全保障上のリスクが高まっている。具体的には、気候変動に伴う干ばつの発生や、災害の激甚化・頻発化による不作、家畜伝染病・植物病害虫などの発生・蔓延、新型コロナウイルス感染症や地政学的リスクなどによるサプライチェーンの混乱などのリスクを想定をしている。食料供給困難事態の具体的な基準については、法案の中で定める基本方針の中で今後定めることになっているが、重要な食料の入荷について平時の供給量が2割以上減少することを一つの目安として、今後必要な検討を行って定めていきたい。
大椿ゆうこ/ 地政学的リスクの高まりとは、具体的にどういうような状況を想定しているか?
政府参考人[農水省]/ ロシアによるウクライナ侵略や、イスラエル・パレスチナなどの中東情勢の緊迫化等、国・地域間の競争の激化を地政学的リスクとして認識をしている。
大椿ゆうこ/ 最近政府は「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」という言葉を使う。台湾有事を念頭に置き、沖縄・南西諸島の軍事基地化が進んでいたり、日本の全国の港の軍港化、弾薬庫の新設等がすごい勢いで進んでいくのを見ていると、日本が戦争になることも想定されているのではないかと思う。その辺り、大臣の見解は?
政府参考人[農水省]/ 紛争リスクだけではなく、気候変動、作況指数の悪化、インド・アフリカ等における人口急増による食料の争奪戦、また日本への輸入ができなくなるというようなことも想定して、今回の供給困難事態対策法案を提案した。
大椿ゆうこ/ この法案が出されたとき、農業にも戦争の足音が聞こえてきたのかという懸念を持っている農家の人たちもいらっしゃるんだということを是非お伝えしたい。今回の法案では、国民が最低限度必要とする食料が不足するおそれがある場合は、食料供給困難事態対策本部が生産者に対し生産転換の要請・指示ができるとなっている。国は生産者らに生産拡大に関わる計画の届出を指示するが、それに従わなかった場合は20万円以下の罰金を科し、正当な理由なく計画に沿った取組を行わなかった場合は公表するとしている。農家が何を生産し販売するかは、それぞれの農家が決めることだ。私たちの食を支えてくれている農家の人たちの私権を制限し、それに従わなかった場合は罰金刑に処し、名前を公表する。国として、これは余りに傲慢なのではないか?
坂本農水大臣/ 20万の罰則に対しては様々な意見があるが、食料供給困難事態においては、どれだけの供給能力があるかを把握しなければならない。そのため、生産者にも供給能力を把握するための届出をして頂くことを今度の法案で明記している。食料品が狂乱物価で値上がりした場合に生産計画の届出を求める国民生活安定緊急措置法においては、届出義務に違反した生産者に20万円以下の罰則を科す過程が既にあり、罰則が傲慢・過剰であるとは考えていない。
大椿ゆうこ/ 農家の人からすれば、罰金はかなり感じ悪い内容だと思う。自分の親と話していても、この法案についてはいろいろと思うところがあるようで、食料供給困難事態を理由に花農家に芋を作れ、耕作放棄地となった土地にもう一度米を作れと指示されても、「そんな簡単にできるわけがない、土から変えなければならないのに」と言っていた。そもそも農業の担い手不足が大きな問題になっているときに、担い手獲得のための具体的な計画も打ち出さず、食料自給率の向上より相変わらず輸入に依存した食料・農業・農村基本法改正案しか出せない政府が、食料供給困難事態になったからといって慌てても間に合うはずないと思うが、農家のこういった意見に対して大臣はどうお答えになるでしょうか。
坂本農水大臣/ 花農家に芋を作らせるのかという話が先行しているが、現実的にはこのようなことはない。ただ、食料供給が困難であるという事態を想定し、様々なことを考えなければならないので、花農家も含め色々な農家に対し、届出だけはして頂く。だからといって、米や麦を作れということではない。現実的に農業者がどこまで可能なのかを考えた上で要請を行うため、非現実的な話が先行していることについては否定していきたい。
大椿ゆうこ/ 日本に暮らす人々の命を守るためには、軍拡よりも農業・第一次産業をしっかりと税金で支えることが必要だと大臣にお伝えして、質問を終わる。
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